不安
マルオが再び目を覚ました時に、彼はいなかった。マルオは部屋を見渡した。物があまりなくとてもシンプルだがきれいに片づけられた部屋である。
「シュバちゃんは?」
マルオは姿が見えないシュバインのことを探したが、何処にも見当たらない。吹雪の中でシュバインとははぐれてしまっていた。付き合いはそれほど長くはないが、ここに来る道中で多くの話をした。マルオにとってシュバインはこの世界のことを教えてもらった師匠のような存在であった。
「そういえば、ドンちゃんもいない! どこへ行ったんだ!」
その時扉が開いて、この家の主とその肩に乗っているドンテルが入ってきた。
「おお、マルオ目を覚ましたか! 今狩りにいってきたよ」
ドンテルが軽い口調で話してきた。
「獲物をとってきた。今から暖かいものを作ってやる。それを食べたらふもとまで送ってやるから、安心しろ!」
この家の主はそういうと、台所に向かった。
「すみません! シュバちゃん、いえ僕の他にもう一人老人がいたと思うんですが、彼をしりませんか?」
マルオはシュバインのことがとても心配だった。
「知らんな、私が見つけたのは君だけだ! 今も外には誰もいなかった!」
「そんな!」
マルオは一人倒れているシュバインの姿を想像した!
「探してきます!」
マルオは立ち上がり扉に向かおうとした。
「まて! 外は吹雪だ! 今出て行っても再び遭難するだけだ。私に助けられたその命を無駄にするのか。それにこの辺りは1年中吹雪が晴れることはない。 残念だが今の段階で見つけられてないということは、その彼はもうなくなっている」
「そんな!」
マルオの目には涙がにじんだ。
「心配するな! マルオ、あの爺が簡単にくたばるわけがなかろう、どこかでしぶとく生きておるわ!」
ドンテルはシュバインのことを少しも心配していないようだった。
「このリス殿に聞いたのだが、君は私を訪ねてこんなところまで来たらしいね」
「はい、その通りです」
マルオはここに来た経緯を説明した。
「なるほど、そのシュバインという老人が以前私が助けた、あの老人か! 私がその竜王子だとして、私に会いに来た目的はなんだね?」
小屋の主は静かな口調で話していた。
「僕は人間になりたいです!」
「あなたは竜族から人間になったと聞きました! 僕にその方法を教えてください」
マルオは深く懇願した。
屋敷の主はしばらく黙って考え込んでいた。
「無理だね! 送ってあげるからあきらめて帰るんだ!」
「お願いします。お願いします。お願いします。僕を人間にして下さい」
マルオは断られてもあきらめずに頼み続けた。
屋敷の主は困った顔をしたが、何かを吹っ切って話をした。
「私は確かに君の言う竜王子だ! しかし君を人間にする方法は教えることができない。というより君を人間にできない」
「えっ、どういうことですか!」
マルオは困惑した。