テッツの苦渋
遊撃隊本部無目指していたニッカ小隊は、本部の方角から火が上がっているのを確認した。
「あ、あれは・・・・おそらく本部はもうだめだろう」
ニッカは呆然とした。
「ニッカさん、騎士団の駐屯地に向かいませんか」
シュバはニッカに提案した。確かに、この事態を騎士団に伝えることができる唯一の冒険者はニッカ達だけかもしれない。
「そ、そうだな・・・・」
本部の崩壊を見て心がおれそうなニッカであったが、傍らにいたシュバの言葉で我を取り戻して騎士団駐屯地を目指すことにした。
シュバ達はゴブリンに気を付けながら騎士団駐屯地にむかった。
一方撤退の判断が遅れた遊撃隊主力部隊はまだゴブリン軍と戦っていた。撤退の指示はかなりまえにでていたが、周りをゴブリンに囲まれて、抜け出せないでいた。800人いた冒険者でまだ戦っていたのは400人になっていた。
隊長のテッツはさすがにAクラス冒険者であった。1人でゴブリンを100体以上倒していた。だが、さすがのテッツも疲労の色は隠せず、すでに満身創痍である。
「お前が大将か? なかなかやるな!」
テッツに声をかけてきたのはカチンであった。
「貴様!」
テッツはカチンを睨みつけた。
カチンは右手を挙げてゴブリン軍全体に戦闘の停止を促した。
冒険者たちは何が起きたかわからず、きょろきょろしていた。
今まで激しい戦いが繰り広げられていた戦場を突然の静寂が支配した。
「お前たちにチャンスをやろう! オレとお前の一騎打ちでお前が勝てば、われらゴブリン軍はお前たちへの攻撃をしない。自由に逃げるがよい!」
カチンは突然テッツへ提案した。カチンは自らの強さに絶対の自信を持っていた。部下達に対して自らの強さを見せつけるとともに、自身の戦闘狂の欲望も満たしたかった。
価値の突然の提案にテッツは迷った。確かに一騎打ちで勝ちさえすれば、逃げるチャンスが生まれるかもしれない。しかしゴブリンたちが、カチンの指示を守る保証はない・・・・
最もテッツが迷ったのは相手がゴブリンキングだということだった。ゴブリン種族の最強種族であり、伝説級の強さのカチンに自分は勝てるのだろうかと考えている。
テッツ自身は決して弱いわけではないが、最強の冒険者というわけでもなかった。個の強さというよりは、パーティーメンバーで力を合わせてAランクになった。
「くそっ、どうしてこんなことになったんだ・・・・オレは、オレはゴブリンどもを駆逐して騎士になるはずだったんだ・・・・なんであんな化け物と・・・・」
テッツの心の中は、揺れ動いていた。
カチンとテッツの様子を後方から見ていたマグマグは肩をすくませてやれやれという思いで見ていた。マグマグとしては、この瞬間に矢でテッツを打ち抜きたいとも思っていたが。そんなことをすればカチンの不興を買ってしまう。
「おい、腰抜け! オレが怖いのか! それなら奴隷にしてやってもいいぞ!」
カチンがそういうとゴブリン軍で嫌な笑いがそこら中で起こった。
これには、さすがのテッツも怒りをあらわにした。
「ゴブリン風情が生意気に! 一騎打ちで葬ってやろうではないか!」
テッツはとうとう、一騎打ちを受けてしまった。
カチンは口元をあげて、笑みを浮かべた。
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