敵襲
ニッカ隊が撤退を始めたころ、遊撃隊本部でも異変が起きていた。
本陣を守る兵は100人ほどである。それほど、戦いに積極的でないものが残っていた。
見張りは夜襲を受けた経験から20人を割いていた。残りの物はそれぞれのテントで休憩をとっていた。
「なんだ、あの灯りは? 伝令が帰ってきたのか?」
見張りの兵は暗闇にあらわれたいくつかの明かりを発見した。
しかし、その明かりは一気に数百、千と増えていった。
「ザシュッ」
「えっ?」
横にいた見張りの兵がいきなり火矢に撃ち抜かれた。
一瞬の硬直のあと、我に返った見張りの兵は大声で危機を知らせようと思った瞬間、無数の火矢が遊撃隊本部を襲った。
「うわあああああああああああああああっ」
「敵襲だ!」
本陣の中は大騒ぎである。まさかこのタイミングでまたも夜襲を受けるとは思っていなかったからだ。
ゴブリンの数は1000! 以前の夜襲とほぼ同数である。しかし冒険者たちはわずか100人、こちらは以前の10分の1であった。
無数の火矢によって遊撃隊本部は火の海であった。
「火を消せ―っ」
「食料を守れ!」
本部の中では怒号が飛び交っている。
しかし、そんなことをしている場合ではなかった。
「うわーっ」
「がばっ」
「ごんっ」
一通り火矢を撃ち尽くしたゴブリン軍は、一斉になだれ込んできた。
「うわーっ」
「ゴブリンが攻めてきたぞーっ」
以前の夜襲と違い、今回のゴブリン軍は適当に暴れて撤退するということはなかった。徹底的に蹂躙するつもりであった。
数の上でも士気の上でも大きく劣っていた遊撃隊は次々と、倒れていった。
もはや、ゴブリンとまともに戦おうとしている冒険者は一人もいない! 冒険者たちは武器も持たずに逃げ出していた。しかし、組織立って動いているゴブリン軍は、そんな冒険者たちを次々と打ち取っていた。
本部に残っていた冒険者はわずかな時間でゴブリン軍により全滅した。
一方、テッツによる遅すぎた撤退指示により撤退を始めた攻撃組の冒険者たちは前後から挟撃されて、思うように撤退できずにいた。一人また一人と倒れていった。中には逃げ出せたものもいたが、仲間のパーティーメンバーを見捨てて、命からがらにげだすもの。重傷を負いながら逃げたはいいが、森の中で動けなくなったもの等、ほぼ全滅状態であった。
ゴブリン軍と冒険者、傭兵で構成された遊撃隊の勝敗はまさに必至であった。
天才軍師に率いられ、軍としての行動を常にとってきたゴブリン軍と、そもそも軍として戦ったこともない烏合の衆であった冒険者の寄せ集めでは最初から勝敗は見えていた。
軍対軍の戦いでは1人の強さよりも、集団としていかに敵と対峙できるかが非常に重要であった。
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