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ニッカ隊撤退

 ニッカ小隊は、カチンの親衛隊が現れてすぐ、テッツの指示を無視して撤退を開始した。

「ニッカさん、命令無視して大丈夫なんですか?」

 シュバ自身も撤退判断は正しいと思っていたが、遊撃隊の冒険者たちが戦っている中で、逃げ出すことに後ろめたさを感じていた。


「オレはこれ以上、パーティーメンバーを無駄死にさせたくない!」

 ニッカは強い気持ちの入った言葉でシュバに答えた! ニッカは過去の思いから馬鹿な上官のおかげで若者の命を散らせたくはなかった!


「みんな撤退だ!」

 シュバもニッカと同じように撤退の指示を出した。これによりニッカ小隊は全力で撤退を始めた。

 しかしこの時点で周りをゴブリンに囲まれていた。撤退といっても簡単ではなかった。


「ブラックボール」

 シュバは魔法の玉を掌に浮かび上がらせた。

「うおおおおっ」

 シュバはそのままゴブリンで群がっている場所めがけて、思いっきり投げ飛ばした。

 シュバの投げた黒い玉はゴブリンを次々と貫通し、バタバタとゴブリンが倒れた。


「みんな、こっちだ!」

 シュバが黒い玉を投げた先には、1つの道ができていた。シュバ達は、その空いた道を疾走した。

 

 ニッカは振り返って、まだ戦いを続けている遊撃隊をみた。カチン親衛隊に蹂躙されて、前後2方向から挟撃されている状況だ。もはや時間の問題であった。

 ニッカは次々倒れ築冒険者たちを見て涙を流しながらも足を止めなかった。

「ニッカ隊! 決して振り返るな! 走り抜けろー」

 ニッカは大声で小隊を鼓舞した。


 シュバ隊は後ろを振り返ることなく走り切った。気が付くと周りにはゴブリンもニッカ隊以外の冒険者の姿もなかった。


「みんな、止まれ!」

 シュバは叫んで無我夢中で走っている小隊に合図した。


「はあ、はあ、はあ」

「振り切ったのか・・・・」

 ニッカ小隊の面々は満身創痍だった。


「はあはあはあ・・・・シュバ君、君の魔法すごいな! おかげで助かったよ!」

 ニッカはシュバの肩をたたき感謝した。他のパーティメンバーたちも息を切らしながらも、シュバに頭をさげて感謝した。


「はあはあはあ、ニッカさん、これからどうしますか?」

 シュバも息を切らしながら、ニッカに質問した。


「陣に残っている100人ほどの冒険者にこの事態を知らせに行こう!」

 ニッカ隊が最も早く撤退を始めたため、誰よりも早く残存組に状況を伝えることができる。放っておけば、ゴブリン軍がいずれ襲ってくる可能性が高い。

 100人の冒険者とニッカ隊、それに今後でてくる敗残兵をあわせれば、何とか再戦できるかもしれない。


 ニッカ隊は休憩もそこそこに本陣に向かって歩き出した・・・・


 いつもお読みいただきありがとうございます。

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