テッツの判断
ゴブリンたちは、一斉に飛びかかってきた。しかし歴戦の冒険者たちで構成される遊撃隊は、ものともせずにゴブリンたちをなぎ倒していく。
隊長のテッツの顔はにやついていた。所詮、ゴブリンなど、こんなものだと感じていたのだ。冒険者としてそれなりに大成したテッツであったが、もともと冒険者志望ではなかった。
子どものころは騎士に憧れ、ずっと騎士団に入ろうと思っていた。しかし10倍以上という騎士団選抜試験にはとうとう合格出来なかった。その悔しい思いをバネにテッツは頑張った。そしてとうとうA級の冒険者まで上り詰めた。しかし世界に数人しかいないS級冒険者になれる気がテッツには全くしなかった。S級は別格なのだ。テッツのような凡人がいくら努力してもそこには大きな壁があった。
またも挫折したテッツにかつて憧れていた騎士になれるチャンスが舞い込んできたのだ!
遊撃隊の隊長に任命されたテッツはこの戦いで活躍すれば騎士団に入ることができるのだ!
あの憧れの騎士団に・・・・
今テッツ率いる遊撃隊はゴブリン軍を圧倒している2倍以上の兵力さをものともせず。ゴブリン軍はどんどん引いていく! テッツが思うよりもはるかにゴブリン軍は弱かった。
ゴブリンが徒党を組んでも。所詮こんなものかとテッツは感じていた。
とうとう遊撃隊はゴブリンたちを砦まで追い詰めていた。
「ははははっ」
思わずテッツは笑みがこぼれていた。夜襲を受けたときはゴブリンに対する考えを改めないといけないと感じてはいたが、しかし今目の前にいるゴブリンたちはテッツの知るゴブリンそのものだ。弱くずる賢く、醜い魔物・・・・駆逐する対象でしかなかった!
遊撃隊がゴブリンたちを砦前まで追い詰めたとき、戦いは一度とまった。ゴブリン軍、遊撃隊ともに決戦に向けて体制を整えたからだ。ここまで数キロ戦いながら移動してきた中で、遊撃隊の死者がほとんどなかった。対するゴブリンたちも基本的には戦わずに逃げてきたので死んだのは数人程度でしかなかった。
シュバは、ここまでの戦いで大きな違和感を持っていた。ゴブリン自体はそれほど強い魔物ではない。しかし複数のゴブリンを相手にした場合、1体を相手にする時よりもはるかに討伐が困難になる。
しかし、目の前のゴブリンたちは一切の連携をすることなく、剣を適当に合わせると、すぐに逃げ出す始末だ。
確かに、この状況なら、今日中に砦攻略も夢じゃない。もう一つシュバの不安なことは、例のホブゴブリンの姿が見当たらないことだ。確かに砦の中で守りについているゴブリンもいるだろう・・・・しかし奴はそんなタイプではない! そのホブゴブリンの姿が、この砦前まで来ても、一切見当たらないのだ!
その時、1人のゴブリンが砦の中から馬に乗ってでてきた。見る限りただのゴブリングリードだ!
彼はその手に持つ剣を高らかに天に掲げた!
「うおおおおおおおおおおおおおおっ」
一斉にゴブリンたちが奇声を上げた! 急にゴブリンたちの気配が変わった!
「みんな、撤退するぞ!」
シュバ何かとてつもなく嫌な感じが襲った!
「て、撤退ってシュバ! 敵前逃亡になるぞ!」
クニが焦ってシュバを止めた。
しかし、シュバには敵前逃亡ではなく、今全軍で撤退しなければ間に合わなくなるという確信があった。
「い、いやシュバ君の言うとおりだ!」
ニッカも何か感じ取っているようだ・・・・
しかし、すでに撤退のタイミングとしては、もう遅かったようだ。
次の瞬間、遊撃隊の背後に突如、ゴブリンの部隊が姿を現した。
もともと潜んでいた伏兵だ!
「くそっ!」
テッツは図られたことをこの時初めて知った。
しかし、見る限り背後の伏兵は200程度だ。この程度ならば、大した問題にはならない。ゴブリンをあまりに軽く見ていた自分を反省はしたが、今の状況は撤退するような状況ではない。依然として砦のゴブリンたちを殲滅するチャンスだ!
テッツはそう判断して総攻撃の合図を出した。
「ええい所詮はゴブリンだ! 臆するな! 全軍攻撃だ!」
前後をはさまれた、遊撃隊は、前後に分かれてゴブリン軍に突撃した。
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