吹雪の中で
マルオにシュバインそれにドンテルを加えた3名は、1カ月以上、急峻な山道を登ってはおり、降りては登り、少しづつではあるが目的の山小屋に近づいていた。人里を見つけては、少々の食料を分けてもらい?村人に追いかけられていた。
「シュバインよ、まだつかないのか!気温も下がってきて、あたり1面は雪に覆われているぞ」
毛皮に包まれているドンテルも、北の果ての寒さは、かなりきついようであった。
「まだしばらくはかかるだろう。わしが山小屋を見たのは、この程度の雪景色ではなかったからな。これからが本番といったところだ」
マルオはそれをきいて、かなり憂鬱になり、話をするのも億劫であった。
◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さらに1カ月マルオ一行は雪山を突き進んでいた。一行はすでに話をする気力もなくしていた。この1カ月の食生活といえば、木の皮と、たまに見つける雑草くらいであった。
最初に力尽きたのはドンテルであった。もはや動くこともままならないドンテルをマルオは自らのフードの中に入れ、寒さをやわらげてはいたが、もはやいつこときれてもおかしくない状態だった。
「シュバちゃん、このまま進むことは危険ではないでしょうか?」
マルオは山小屋へ到着することを一旦断念し、再アタックすることを視野に入れていた。
「だめだ! お前は再びチャレンジするようなことを考えているだろうが、われ等に再び訪れるだけの力はもはやない。今回たどりつけなければ、われらの運命はそこまでということだな! だからお前はたとえわしが倒れたとしても前に進み続けるのだ!」
シュバインは悲壮な決心をマルオに伝えた!
マルオは黙ってうなずいた。
マルオたちは、再びさらに激しくなった吹雪の中を歩き出した。いつしか周りの景色もわからないくらいの激しい吹雪となっていた。
「シュバインはどこだ? 僕は今どこを歩いているんだ!」
マルオは意識がもうろうとしながらも歩みを止めなかった
マルオはとうとう力尽きた。深い雪の中にマルオは倒れこんでしまった。
「僕は何をやってるんだ。ゴブリンが人間になることができるなんて話を聞いて、あんなみすぼらしい爺と、こんなところまできて! このまま死ぬんだろうな。まあいいか。ゴブリンとして生きていても、たいして幸せになれそうにないしな!」
マルオは前世の婚約者麗華のことを薄れゆく意識の中で思い出していた。
「麗華、愛してる、今頃君は何をしてるんだろうな。あいたいよ!」
マルオの意識は静かになくなっていった。
◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「暖かいな! 僕は死んだのか! なんだかいい気分だ」
「目が覚めたか!」
その時、聞き覚えのない声が聞こえた。
「えっ!」
マルオは静かに目を開けた!
「あなたは!」
マルオはそういうと再び眠りについてしまった。