食料の差し入れ
「おめでとう! 今日から君たちは正式に遊撃隊メンバーだ! 私は国王からこの遊撃隊を任されたテッツ!」
彼は王国から冒険者ギルドを通して就任を打診されたAランク冒険者だ。
「我々は騎士団ではない、そう堅苦しくする必要はないが、軍として動くためには一つの塊として動かなければならない! 冒険者として活動している君たちにとって、やりにくいこともあると思うが、よろしく頼む」
テッツの挨拶は簡潔でわかりやすく概ね冒険者たちに評判がよかった。
「今日はマウント国からの差し入れだ! たらふく食べて飲んでくれ!」
シュバ隊は十二分に用意された、食料や酒をそれぞれ腹いっぱい食べた。
「おいシュバ、やっぱり騎士団に入ると毎日こんなに食べて飲んでが可能なのか?」
騎士団希望のクニがシュバに尋ねてきた。
「どうかな、毎日ってことはないと思うけど・・・・」
シュバは国民がゴブリン侵攻で疲弊している中で騎士団が贅沢三昧している姿が浮かんでいた。
「確かに、この食糧どこからもってきたんだか?」
デンもあまりいい気がしてないようだ。
「そ、そうだな・・・・」
クニも何かに気づいたようだ!
「おーい、みんな食べてるか」
イオが両手に食料抱えて歩いてきた・・・・
「まあ、あいつはな・・・・」
シュバ達はイオの姿を見てため息をついた。
遊撃隊は翌朝、ゴブリンが作った砦の攻略に向かった。砦といってもゴブリン兵3000
が守っていた。シュバ達の3倍だ。
移動は各自の馬車や馬を使うため、シュバ達も馬車で軍に参陣している。このあたりが、冒険者をかき集めた促成部隊であった。ゴブリン城の攻略は騎士団が担当していた。
ゴブリン砦の3キロ手前で遊撃隊は陣をひいた。
「ゴブリン城攻略担当ではないからといって、力抜くんじゃないぞ!」
「この砦を放置すれば、本隊はゴブリン城とゴブリン砦に挟まれて、全滅必至だ!」
「われらは、必ずこの砦を落とさなければならない!」
そうなのだ、砦攻略は、この戦争で勝敗を分ける重大な1手である。マウント国としても本来なら、こんな重要な拠点攻略を冒険者の烏合の衆に任せたくなかったが、圧倒的な数の暴力でゴブリンに押されていたので、冒険者に頼るしかなかったのだ。
「少数の偵察部隊を組織する希望者は名乗り出ろ」
テッツは突然、募集を開始した。
すかさず、手をあげたのはイオだった。
「お、おいイオ、なんで手をあげてるんだ!」
シュバは反対だった。
「何言ってるんだ! ゴブリンのハジメがいるおれたちがやらなくて誰がやるんだ!」
イオにしてはもっともなことを言っている。
「おお、お前たちゴブリンの従魔がいるのか!」
テッツはハジメを見て、偵察部隊はすんなりシュバ組に決まってしまった。
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