開戦
マウント王国王宮の執務室の1室にセロ将軍とラオ軍師は向かい合って座っていた。
「将軍、時は来ました!」
ラオはセロ将軍に作戦成功の報告に訪れていた。
「ご苦労であった。後は我らの出番だな」
セロ将軍はそういうと静かに執務室を出た。表面では平静を装っていたが、セロの心の中は闘争心で燃え滾っていた。
セロ将軍はマウント王国騎士団3千、魔道師団千、それに冒険者や傭兵で構成される遊撃隊千、総勢5千の兵を率いてゴブリン国に兵を出陣した。
一方 ゴブリンの国、ヤマダ国のカチン将軍はちょうど、マウント国出兵の報告を受けていた。
「とうとうきたか!」
カチンは余裕の表情を見せていた。
「ミトはどうしてる?」
カチンは腹心のマグマグに確認した。
「ミト王は籠城の構えのようです」
マグマグは浮かない表情だ。
「予定通りだな! どうしたマグマグよ、何故そんな顔をしている」
カチンはマグマグの表情が気になった・・・・
「いえ、長年世話になった方を裏切るのは心苦しいのです」
マグマグは小声で答えた。
「そなたの気持ちもわかるが、これもゴブリン国のためだ!」
カチンはマグマグの両肩を掴み、励ました。
「大丈夫です! やるべきことはわかっております」
マグマグはそういうと部屋をでて、自室に帰っていった。
「軟弱な奴め! しかし、奴の知能のおかげで、このおれがゴブリンの真の王となる」
カチンは手に持っていたグラスのワインを一気に飲み干した。
ミトはその頃王の間にいた、ゴブリン軍は3万である。いくら弱いゴブリンといえども数の暴力で十分にマウント王国と、全面対決は可能である。
「王、何をそんなに悩んでおられるのか? 我ら万全の態勢で迎え撃ってみせます」
王の親衛隊長が浮かない表情のミトを見かねて声をかけた。
「いや、何でもない。気にするな!」
ミトはずっと嫌な感じがしていた。それが何かわからないために、そんな表情をしてしまっていた。
「皆がカチンのようにわかりやすければな・・・・」
ミトはカチンのことを考えると、なぜか笑ってしまった。相容れないゴブリン軍きっての将軍であるが、その人となりについてはミトは嫌いではなかった。
「カチン将軍ですか・・・・」
親衛隊長はミトの言っている意味が理解できなかった。しかし彼はミトのためならば、命をかける決心を固めていた。
こうしてマウント王国とヤマダ国の全面戦争が幕をあけた!
シュバ達のシンシン村は、この戦争のために、ゴブリンたちの襲撃もなく着々と発展していた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
今後は、本格的にゴブリンと人間軍との戦いが始まっていきます。
主人公のシンはまだしばらくは登場しませんが、ゴブリン戦争の途中で一度登場します。