問題発生
シュバはイオからハジメをはぎ取り、様子を確認してみた。
小さな擦り傷はあったが、大きなものはなかった。おそらく打撲による衝撃で気絶したのだろう。
「ハジメ! ハジメ!」
シュバはハジメの頬を軽くはたき、声をかけた。
「ん、うーん」
ハジメは意識を取り戻した。
「ハジメ! 大丈夫か?」
シュバはハジメに声をかけた。
ハジメは自分の体を軽く確認した。
「はい、大丈夫なようです!」
ハジメは無事だった。
「ハジメ―!」
ハジメの無事を知ったイオは再びはじめを抱きしめ号泣した。
ハジメの無事を確認したシュバとデン、クニは再び屋敷の中を確認した。
「やはりこの屋敷にはゴブリンはいないようだな! まだゴブリンが村にいるかもしれない。他の家を確認するぞ!」
シュバはデンとクニを連れて、屋敷を出ようとしたとき何人かの人影が見えた。
「ありがとうございます。私たちは、この村の住民です。助けていただき感謝します」
村人たちは深々と頭を下げた。
「この村にまだゴブリンはいますか?」
シュバが尋ねた。
「いえ、皆さんがゴブリンをすべて退治していただき、今この村にはゴブリンはいません」
「私はこの村の村長です。皆さん、お疲れでしょう・・・・どうぞ私の家に来てください」
村長の案内でシュバ達は村長の家に向かった。
村長の話でわかったことだが、ホブゴブリンは宿屋に隠れていたようだ。シュバ達を襲撃した屋敷はもともと村長の家だったが、ゴブリンたちが来てからは、ゴブリンのたまり場のような場所になっていたとの事だった。
「村長、ゴブリンを倒したといっても、ボスであるホブゴブリンは逃がしてしまった。申しわけない」
シュバは頭を下げた。
「いえいえ、私どもも、恐怖で奴らに逆らうことなく奴隷に甘んじてしまいました。本当に恥ずかしいことです・・・・」
村長は自分たちを恥じているようだ。
「これから、どうされますか?」
シュバは村長に質問した。返答次第ではしばらくこの街の守護をしようと考えていた。
「この村は最前線に位置します。我々がここに残れば、また奴らの餌食になるだけです! 我々は王都に向かおうと思います」
村長はしっかりと考えているようだ。
「しかし問題が一つ・・・・」
村長は深刻な顔をした。
「ゴブリンの子どもを身ごもってしまった娘が・・・・」
村長はそれ以上話せなかった。
非常にまれなことであるが、人間がゴブリンの子どもを身ごもってしまうことがある。その子はゴブリンヒューマンとして、見た目も中身もほぼ人間と変わらない状態で生まれてくるが、多くの場合差別的な風習で人間社会では暮らせない・・・・
シュバはしばらく黙って考えていた。
「村長、もしその娘が嫌でないなら、オレに、その娘を預けてもらえないでしょうか?」
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