ゴブリン村2
「おいおい、せっかく助けに来てやったのになんてこと言うんだ」
イオが憤慨して声を荒げた。
「イオ、声が多きい!」
「しかし、突然のことで驚かれていると思いますが、我々を信じてください」
シュバは冷静に話を続けた。
女性はシュバに対してしかめっ面しながら答えた
「以前もあなた達のような冒険者がこの村に来た事があります」
「彼らも、今のあなたのように立派なことを言ってました。私たちは、初めて来た救援に歓喜し、これでやっと自分たちも救われると思いました」
女性は涙を流しながら話している。
「彼らは結局、ゴブリンたちと適当に戦っただけで、この村を去っていきました」
「思っていたよりもゴブリンが多かったのか、強かったのか分かりませんが、残された私たちは、冒険者に救援を要請したと誤解されて、その後、ひどい仕打ちを受けました」
なるほど、この村の人達は、心無い冒険者のおかげで、もはや助けを諦めていたのだ。
「奥さん、事情は理解しました! しかし私達は、そのような冒険者ではありません。必ず命にかけて、この村の人たちを救出してみせます!」
シュバは熱く説得力のある言葉で語った。
「そんな言葉は聞きあきました! とにかくゴブリンに見つかる前に早く出ていってください」
女性はシュバの話などに聞く耳はないようである。
シュバ達は仕方なく、一旦村から出ることにした。
ゴブリンに見つかることのないよう、4人は村を出て、村のすぐ近くの茂みに身を隠した。
「シュバ、どうするだ? ああいわれて、この村を見捨てるだか?」
デンはシュバに詰め寄った。
「いや、彼女にしても、このままで本当にいいなんて思っていないはずだ! ただ過去に経験したトラウマがさっきのような言動になっているだけだ!」
シュバは険しい表情をしている。
「夜をまってゴブリンを1体1体見つけて対応していくのはどうだろう」
クニが提案したとき、村の方が騒がしくなった。
見張りのゴブリンが2体共いなくなったことでゴブリンたちが騒いでいるようだ。
「くそっ、このままじゃ早速さっきの女性が言ったとおりの迷惑をかけてしまう」
「かといって、今出ていけば、村人を人質にとられかねない・・・・」
シュバは歯をかみしめて村の方角を眺めている。
「シュバ、どのみち今は出ていけないだ! 村人には悪いがクニの言う通り夜を待って潜入するだよ」
デンがシュバの肩をたたいて落ち着かせようとしている。
「あっ!」
イオが大声を出して、自らの両手ですぐに口をふさいだ。
「どうしたんだ、イオ! 気をつけろ」
クニがイオを注意すると、イオは村の方角を指さした。
「あっ!」
クニもつい声を出してしまった。
そこにはホブゴブリンが1体いたのだ。
「くそっ! 最悪だな!」
シュバ達は益々追い込まれた。
「どうやら、前来た冒険者はあのホブゴブリンを見て撤退したんだろうな」
クニの言う通りであった。
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