ミトとマグマグ
「マグマグか、入れ!」
ミトはカチンの娘婿マグマグを自室に迎え入れた。
「陛下、ご機嫌麗しゅう!」
マグマグは膝をついてミトにお辞儀した。
「そのような硬い挨拶は我らに間では必要ないことだ!」
ミトはグラスに酒を注ぎながら椅子に座るように促した。
「では、ミト様失礼いたします。しかしある程度は臣下の礼を尽くしておきませんとけじめというものが付きませんので」
マグマグは椅子の腰かけながら答えた。
「相変わらずだな・・・・」
「乾杯!」
ミトは慣れた感じでマグマグと乾杯をかわした。
「それにしても、カチンのとこにそなたを送ってからは昔のように酒をかわす機会も少なくなって、オレはさみしいぞ!」
ミトは普段とは違いマグマグにはかなり気を許しているようだ。
「ミト様、カチンを見張るように私をカチンの娘と結婚させたときは少々驚きましたが、まさかカチンがあそこまで私に気を許すとは思いませんでした」
マグマグもミトに対してかなりフレンドリーに接している。
「あやつが、お前に一目置いているのは知っていたからな。まさかマグマグがこのおれの最初の家臣だとは知らないだろうな」
「あの図体ばかりでかい馬鹿ゴブリンは、マグマグのような軍師がいないと何もできないから、お前が、第1軍団に入る必要があったからな」
ミトは酒を飲みながらも冷静に話をしている。
「はい、カチンは私の指示通りよく働いてくれています」
マグマグは気を許しながらもミトに対しては常に礼儀正しく接している。
「ただ、やつには気をつけろ! カチンはそもそもわれらのようなゴブリングリードを馬鹿にしている。 お前はまだ、娘婿という立場ながら自らの部下だからよいのだろうが。このおれの風下に立つことは心底許せんのだろうな! やつには王に対する忠誠心など全くない」
ミトは笑顔を浮かべながら話している。
「それでも奴には使い道があるからな! 今のうちは将軍としてせいぜい働いてもらうとするよ!」
ミトはグラスを置いてマグマグの目を見て話し始めた。
「カチンに何と言われてここに来た! 大方このオレの弱点を調べろとか弱みを探れとか言われて来たのだろう」
ミトはすべてお見通しのようだ。
「滅相もございません。私はただミト様とこうしてグラスを傾けながら昔の話など語り合いたいと伺っただけです」
マグマグは平然としている。
「ははは、まあそういうことにしておこう」
ミトは立ち上がり、無言で部屋を出て行った。
マグマグは何も言わず最敬礼でミトを見送った。
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