カチンとマグマグ
カチンはマグマグと二人で酒を飲んでいる。
「たまには婿殿とこうして杯を交わすのもよいものだな!」
「尊敬する父上と、横に並んで酒を飲むなど夢のようです」
マグマグはカチンをおだてていた。
「ゴブリングリードでありながら、言葉を巧みに操るだけでなく、わが軍一の知恵者に娘を嫁にやれて、わしはとても満足しておるぞ!」
カチンは気持ちよく酒をあおってすでに少し酔っている。
「ありがとうございます。 突然このような席を設けていただいて感謝しております。 ところで父上様、わたくしに何か話があったのではありませんか?」
酒に酔って話を忘れていたカチンに変わってマグマグの方から切り出した。
「おお、そうじゃすっかり忘れていた」
カチンは婿であるマグマグと飲んでとても良い気分になり、ラオのこと等すっかり忘れていた。
「婿殿よ! 知恵者のそなたに問う! 今のゴブリン国をどう思う」
カチンはかなりアバウトな質問をした。
「はい、ミト国王のもと、初めてのゴブリンの国ができて私は心から喜んでおります。また、父上のような立派な将軍の娘と私のようなものの結婚を認めていただき、父上の度量の広さにはこのマグマグ感動と感謝を抑えきれません」
マグマグはミトの事を褒めつつもしっかりと目の前のカチンのよいしょも忘れていない。
「そうかそうか! 婿殿はよいことをいうなー」
カチンはまたも目的を忘れているようだ。
「父上様、お話の続きがあるのでは?」
マグマグはまたも話の路線を戻した。
もはやカチンは泥酔状態である。
「ああ、婿殿。また忘れておったわ! 確かにゴブリン国の建国はめでた! めでたいことではあるが、ミトでは国王は務まらないのではないか!」
カチンは酩酊状態に近い状態である。
「あやつは、婿殿には悪いがゴブリングリード! 最下層のゴブリンだ! わしのようなゴブリンキングが王になるべきだとは思わんか、ヒック」
カチンはもはや、話すのもつらそうである。
「そこでだ、婿殿! あのミトの弱点を探ってはくれまいか!」
カチンはマグマグの肩を抱きながら顔を近づけて話している。
「父上、私にミト国王のスパイをせよということでしょうか?」
マグマグはカチンの顔が近いのを不快に思いながらも、はっきりとした回答を要求した。
「ん、スパイ? まあそんな大げさなものではなく、私が有利になるようにミトの弱みを探ってほしいということだ・・・・」
「がちん!」
カチンはもはや、起きていることができなくなり、テーブルに頭をぶつけて眠ってしまった。
「父上、それをスパイというのですよ」
マグマグはカチンを冷たい表情で見下ろしている。
「ミト国王のことを調べることについては、お任せください。ちょうど私もいろいろと知りたいと思っていたところです」
マグマグはテーブルの上で眠っているため、明らかに聞いていないカチンに向かって冷ややかに話をした。
こうしてカチンは、だらしなくも一応目的を果たした。
しかし、カチンの娘婿のマグマグはカチンの思っているような従順な男ではなさそうである。
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