ラオの報告
カチンとの長い話し合いを終えてラオは王国に戻ってきた。
「ラオ、首尾はいかがであった?」
ラオの帰りを首を長くして待っていたセロはラオが席に着くや否や質問した。
「は! 全くもって予定通りに事が運びました!」
ラオの顔には自信が溢れていた。
「おお、そうか! お前ならばやってくれると思っていた」
セロは満足そうだ。
「後は、弱点だけか・・・・」
幹部の一人がボソッと言葉を発した。
「そのとおりだ! ゴブリンがここまで勢力を伸ばしたのは、あのミトの絶対的な強さにある」
「いくら敵の部隊を取り込んで内部から破壊しようとしても、あのミトを倒せなければ、作戦は失敗する・・・・」
セロは自身ではミトに勝てないと思っているようだ。
「しかし将軍、そこまであのゴブリンを恐れる必要があるでしょうか? やつが強いのはわかりますが将軍と我らで一気にかかれば、さすがに倒せるでしょう」
幹部の一人がセロに向かって自信気に話した。
「馬鹿者、例え私とお前たちで奴にかかっても、100回やって100回負けるだろう」
セロは以前、ミトと剣をわずかにかわしたことがあった。その数合の剣の打ち合いのみでセロはミトの底知れぬ恐ろしさを実感した。
「まあまあ、どちらにしてもわれらは準備を進めておきましょう」
ラオはセロと幹部のやり取りに割って入った。
「それで王は、なんと申されましたか」
ラオはセロに確認した。
「ゴブリンは皆殺しにせよと!」
セロは真面目な顔になりはっきりと答えた。
「やはり・・・・」
ラオはセロに王への進言をお願いしていた。ゴブリンの事を毛嫌いしているラオであったが、今後の魔族との戦いを考えた場合、ゴブリンの国を一定の規模で残すことは王国のためになると考えていたからだ。
「まあ、そうなるはな・・・・」
幹部の一人がわけありげに話した。
ブオ王は娘の一人をゴブリンに殺されていた。そのため、心の底からゴブリンを憎んでいた、これは国民なら誰しもが知る事実であった。
本来なら、カチンはこの事実に照らしてラオの話がおかしいと見抜かなければならない。しかし、残念ながらカチンにはそれだけの知能がなかったのである。
あるいは、ゴブリン国の他の将軍ならば、簡単に見抜いたであろう、ラオはそれを知ってゴブリン国最強のカチンに数ケ月前から接近していたのである。
「ラオよ、今後の事もそなたにまかせる! われらをそなたの手足として思う存分使うがよい!」
セロ将軍はラオに全権委任した。
「は! お任せを! 必ずやゴブリン国を滅ぼしてみせます」
ラオは自信満々だった。
だが、この時ラオはまだ知らなかった、ゴブリン国の後ろに強大な悪魔の存在を・・・・
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