魔王城にて2
魔王はミノスに心臓を貫かれながらも反撃の機会をうかがっていた。魔王がもつ超回復能力があれば、たとえ心臓を破壊されても、一瞬で回復することができるからである。
ミノスは、魔王が反撃を企てていることは当然分かっていた。長年付き従っていた間、ミノスは常に魔王が何を考え何を求めているかを考え続けていたからである。
「魔王様、無駄です!」
ミノスはそういうと魔王を抑え込む手を放し、剣を魔王の体から抜き、数歩下がったところで、振り向いて再度魔王を見た。
剣を抜かれたことにより魔王の体からはさらに大量の血が流れ出た!しかし、魔王は剣を抜かれたことにより超回復し、ミノスを打ち滅ぼすことを考えていた。万一にも最愛のノブをミノスによって傷つけられないために。
「おかしい!」
魔王はいくら時間がたっても超回復が始まらないことに気づいた!
「無駄ですとお伝えした通りです」
「この剣は神剣ラックスです!」
「私が800年前神界を裏切ったときに大神殿から密かに隠しもってきたものです」
「ラックスに貫かれたものはたとえ神や魔王といえど回復することはかないません」
「別名神殺しの剣といわれているものです」
「なに!」
魔王は自らの死を覚悟した。覚悟したうえで、なおも勇者ノブを助ける方法を頭の中で思いめぐらせていた。
「心配する必要はありません、魔王様!」
「そこの人間は殺さずに生かしておきましょう」
「私にとっては、人間1匹の生死などどうでもよいのです」
ミノスはそういうと、神剣ラックスを再度振り上げた。
「魔王様、これで本当にお別れです!つぎの一撃で魔王様のコアを砕きます」
「コアを失えば、魔王様は死に永遠に復活することもできません」
「もちろん魔王様の籠を失い、神剣ラックスによる光の力により、私をはじめほとんどの魔族は消滅するでしょう」
「お前はそれでいいのか」
魔王は声を出すのもやっとの状態である。
「魔王様の世界が作れないのであれば、こんな世界に未練はありません」
ミノスはそういうと、神剣ラックスを振り下ろした。神剣ラックスは魔王の体を寸断して、同時に魔王のコアを打ち砕いた!
魔王の体は青白い炎に包まれて崩れ落ちてしまった。
次の瞬間、神剣ラックスはまばゆい光を放ち世界全土をその光が覆いつくした!
神剣ラックスの光によりミノスは跡形もなく消滅し、全世界に散らばる多くの魔族は、その光を浴びた瞬間に消滅した。
生き残った力ある魔族や、ダンジョンや洞窟等にいて消滅を免れたものも、その力の多くを失った。
◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇
勇者ノブは神剣ラックスの光を浴び崩壊した魔王城の瓦礫の中にいた。後に神の光といわれる神剣ラックスの光を浴びてから、5日後勇者ノブは目を覚ました。
「シャリーン!」
愛するシャリーンがいない現実をまだ受け止めることができない。
勇者ノブは涙をこらえずにはいられなかった。
その時・・・・
「あれは勇者ノブ様だ!」
神の光により、魔族が消滅し、魔王城の調査に来ていた世界会議連合軍の精鋭騎士団による調査隊の声であった!
「勇者ノブ様が魔王を打ち滅ぼしてくれたぞ!」
こうして魔王城にシャリーンのことを思い、たたずんでいた勇者ノブは世界を救った英雄となった。