ミトの変化
「死にたくない」
「殺さなきゃ」
「人間はいらない・・・・」
「あいつらは危険だ!」
ミトの中ではそんな声がリピートしていた。
「罠が・・・・」
村人たちは恐怖に固まっていた。
ゴブリンとはいえ、魔物が自分たちの目の前に何の制約もなくたっているからだ。
「大丈夫だ、オレに任せろ!」
「網が弱くなっていただけだ」
「ゴブリンなど、何度も倒している!」
冒険者の男は村人に言い聞かせるように自分に言い聞かせていた。
確かに、上位の冒険者とともにゴブリンを狩ったことは何度かあった。
自分一人でも十分に戦えるはずだ・・・・
しかし、目の前にいるゴブリンは自分がこれまでに見たゴブリンとは何かが明らかに違っていた!
「う、うわああああああっ!」
冒険者の男は、違和感を打ち消すように、大きな声をあげて、槍をもってゴブリンに向かって突っ込んでいった。
その違和感をしっかりと向き合えばよかったのだが・・・・
「ざしゅっ」
ミトは向かってきた冒険者の男を、その長く伸びた爪で切り裂いた。
「ぎやああああああああっ」
冒険者の男はミトの前で叫びながら転げまわっている。
「わあああああああああああああああああああああああああっ」
村人たちは、冒険者が一瞬でやられた姿を見て逃げだした。
彼らは恐怖でパニックに陥っていた。
「ざっ」
「シュッ」
「ざしゅっ」
ミトは逃げ出した村人を次々とその爪で八つ裂きにしていった。
「逃がしちゃだめだ」
「今やらないと、また捕まるかもしれない」
「恐ろしい・・・・」
「死にたくない・・・・」
ミトの心の中では、生きるために、殺さなければならないという感情が膨らんでいる。
最期に残った村人は、周りにこれまで、共に生きてきた人たちが1匹のゴブリンにやられて、息をしていない姿をみて、腰が抜けてしまった。
「た、たすけて・・・・」
「お願いします・・・・」
村人は必死にゴブリンに命乞いをした。
「ずしゃっ」
ミトは何のためらいもなく、その村人の首をはねた。
「害虫は駆除しなきゃいけない!」
「生きるために!」
ミトの中で人間はすでに人間ではなく生きるのに邪魔な害虫という認識に変わっていた。
「あっ、あっあ!」
冒険者の男はまだ息があった。村人が全員殺されるのを見せつけられ、恐怖で声も出なくなって、ただ涙を流しながらゴブリンを見ていた。
「シュパッ」
ミトはまだ生きていた冒険者の男の首をはねた。
害虫を駆除し終わったミトは、まだ枝にかかっていたソーセージを食べて、その場をあとにした。
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