巨大ワニとの戦い2
「シュバ、彼を連れて、逃げろ!」
シンは叫んだ。
シュバは副聖騎士団長の肩を担いで通路を街の方向に逃げようとした。
「待ってください! 彼をおいていくわけにはいかない!」
聖副騎士団長はシュバを引き留めた。
「言う通りにしろ! ここにいては足手まといだ!」
シュバはかなり年上の聖副騎士団長にかなり強く言い放った。
聖副騎士団長はそれ以上何も言わずに、シュバとともに通路を街に向かった。
シンは背中の鉄斧を右手に構えた。
「鬼化!」
シンの額から角が延び、その体は巨大化した。
それでも、ワニはシンの5倍以上はあった。
「さあ、人間はいなくなったぞ! お互い、化け物同士やりあおうぜ!」
シンは自虐的に自分を奮い立たせた。
通路には、シンと巨大ワニしかいない状態になって、静まり返っている。
「ドクン、ドクン、ドクン」
シンは自分の心臓の音がはっきりと聞こえるのが分かった。
巨大ワニの最初の攻撃ですでに、持ってきた松明はすべて消えて通路の中は、ほぼ真っ暗である。
シンは落ち着いていた。進化した鬼化によって、攻撃力だけでなく、その五感は野生の獣以上に研ぎ澄まされていた。この暗黒の通路の中でもシンには巨大ワニの気配が分かっていた。
シンと巨大ワニは、共に動けないでいた。初めに動いた方がやられる、双方ともそれが分かっていたからだ。
「がざっ!」
しびれを切らしたのは巨大ワニの方であった。
巨大ワニはシンの真上からその大きな口を開け、シンを丸のみにしようと降ってきた。
「この時を待っていたぞ!」
「うらーーーーっ!」
シンは巨大ワニの大きく開けたその上あごに、全身の力を込めた一撃を振るった!
「がざあっーーーーッ」
巨大ワニは上あごを真っ二つされて、通路の水面を数十メートル飛ばされた。
シンはそのまま、巨大ワニを追って走りだした、とどめを刺すためだ。
しかし水面が、シンの動きで多少波立っているだけで、巨大ワニの気配がない。
シンは再び警戒を高めた。
「ぷかーっ」
シンの目の前に腹を上にした巨大ワニが浮いてきた。
なんとシンの一撃だけで、巨大ワニは絶命した。
「フーっ! やったか!」
シンは巨大ワニの死体を抱え通路を街の方に歩き出した。
後数分で街に出るというところでシンの鬼化が解けた。
「あ・・・・」
シンはそのままうつぶせで通路で気を失ってしまった・・・・
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