巨大ワニ
シン達もシュバとイオの異変を察知した。
「シュバ、どうした!」
シンは小声で語りかけた。
シュバは剣を抜き、目でシンに伝えた。
シンは無言で頷き、背中に背負った鉄斧を構えた。
「ぽちゃん!」
静かな通路に天井から雫が落ちた。
その時イオの後ろから巨大な黒い影から天井の高さまで飛び上がった。
シンはその巨大な影と目が合った!
10メートルを超える巨大なワニであった。
シンは鉄斧を力いっぱいワニに投げつけた。同時に前に飛び出てイオとシュバを後ろに下げた。
巨大ワニはシンの攻撃に驚いたようで、水の中に潜ってしまった。
「シン!」
デンが、ワニがはじいた鉄斧をシンに手渡した。
「ああ!」
シンは鉄斧を受け取りイオ達を守るように、警戒態勢をとった。
「あ、あれって魔物か?」
イオが最後尾に下がりながら、聞いてきた。
「違うな! おれたちが奴の縄張りに入ってしまったから攻撃してきたんだろうな」
シュバがイオに答えた。
「みんな、ゆっくりと進め!」
イオを先頭に通路を警戒しながら進みだした。
イオは震えながらも、何とか歩を進めていた。シンは最後尾で鉄斧を構えている。
「もう、あいついないのか?」
イオが不安そうに質問した。
「いるよ! このまま、逃がしてくれればいいけど・・・・」
シンは腰まである水で思うように動けない状況で、水面を注意してみている。
「そうだ!」
シンはシュバに耳打ちした。
「ストーンクラッシュ」
シュバは小声で呪文を唱えた。
シュバの手のひらから放たれた小石が数個、シン達の後方3メートルにおちた。
「ザザ―っ」
小石が落ちたとほぼ同時に、巨大ワニが飛びだした。
「はぁーっ」
シンは出現する場所とタイミングばっちりで、鉄斧を横殴りで薙ぎ払った。
「ドシャーンッ」
シンの強烈な鉄斧の攻撃を横っ腹に直撃し、巨大ワニは通路の壁に吹き飛ばされた!
「くそ―っ、なんて固いんだ!」
攻撃したシンの手は鋼鉄に打ち込んだような衝撃で強烈にしびれていた。
「今だ! 入れ―っ!」
シンの掛け声で全員が通路を全速力で走った。
「わああああああああっ!」
イオも大声で叫びながら全力で入っている。
「はぁ、はぁ、はぁ!」
気が付いたら5人は通路を抜けていた。