手紙
「シンはまだおきないか?」
シュバはシンに付き添っていたデンに確認した。
「ああ、あいかわらずだよ」
シンはデンに背負われてダンジョンから宿屋に戻って以来、丸3日眠っていた。
「まだ、寝てるんだね・・・・」
イオの赤髪嫁がシン達の部屋に入ってきた。
「なんだ、どうした?」
シュバはめずらしい訪問に首を傾げた。
「これ、あんただろ!」
シュバは手紙を受け取った。
そこには我が息子シュバへと書かれていた。
「なんだ、父上からだ!」
シュバが旅に出てから、父親から手紙が来るのは初めてであった。
「えっ・・・・」
シュバは手紙を読んで絶句した!
手紙の中には短い文章でこう書かれていた。
「ゴブリンの大群に包囲された。至急帰れ」
「どういうことだ・・・・」
しばらく手紙を持ったまま、考え込んでいたシュバはボソッと声を出した。
確かに手紙の内容だけでは、意味が分からない。
ゴブリンが大軍というほど、規則だって徒党を組むこと自体聞いたことがない話である。
それに、ゴブリン自体は、それほど強い魔物でもない、ある程度数がまとまっていても十分に戦えるはずであった。
「どう思う?」
シュバはデンとクニに手紙を見せた。
「・・・・」
「・・・・とりあえず。戻った方がいいのでは」
2人とも、はっきりとしたアドバイスができないようだ。
ましてや、今はシンが眠ったままの状態である。
「・・・・」
シュバは考え込んでいる。
「何迷っているんだ! 帰るぞ!」
シュバの後ろから力強い言葉がかかった。
シンであった。
「シン、目を覚ましたのか!」
シュバは振り向いてシンを抱きしめた。
デンとクニはその姿を見て涙ぐんでいる。
「悪い、心配かけたようだな!」
シンの目にも涙がたまっていた。
4人はしばし、抱擁した後、真面目な顔になった。
「その手紙の内容だけでは、はっきりしたことはわからないが、切羽詰まった状況であることは間違いないと思う」
「それにオレやシュバの家族がいる、迷うことは何もないぞ!」
シンはシュバに力強く語った。
「ああ、わかった! 帰ろう」
シュバも迷いがなくなってようだ。
「デンとクニは、どうする? お前たちは残ってもいいが・・・・」
シンは二人に気を使った。
「水臭いだや、一緒に行くだよ」
デンはシンとシュバの肩を抱いた。
「行くよ」
クニも大きくうなずいた。
「ああ、一緒に行こう!」
こうして4人は手を取りあい新たな戦いに臨むこととなった。
しかし4人はすっかり忘れていた、イオのことを。