独りぼっち
シンは冒険者ギルドに到着した。今回は魔石と素材の換金にやってきたわけだが、魔石は1階層と2階層のボス、それに2階層で倒した蛙の魔物の魔石である。
素材は1階層のボスがドロップした角である。
「換金お願いします」
シンは必死だった。シュバの治療費が思ったよりかかったことに加え、しばらくはダンジョンに行くこともできそうにないからである。
「全部で金貨45枚と、銀貨3枚だね」
ギルドの職員は淡々と会計をした。
「ありがとうございます」
シンはイオとデン、クニの取り分をそれぞれ渡した。シュバには今度お見舞いに行って渡すつもりだ。
シュバが退院しても1週間はダンジョンに行けないとなると、あと2週間は何もできない・・・・
シンは、考え込んで固まってしまっていた。
「シン、これからどうするつもりだべ? シュバが元気になるまで、オラとクニは補助者のアルバイトでもしようと思ってるだ」
デンはギルドを出たところでシンに声をかけた。
そうなのだ、補助者は引く手あまたでアルバイトの口もすぐみつかるのであった。
「あ、ああそうか。 わかったオレはトレーニングでもしてシュバを待つよ」
シンがそういうと、デンとクニは短期バイトを探しに行った。
「イオ、お前はどうするんだ?」
シンは残されたイオに声をかけた。
「そんなの決まってるだろ! 宿屋の仕事手伝わないと」
イオも去っていった。
「2人でダンジョンに行くか?」
イオは去り際にとんでもないことを言った。
「い、いや大丈夫だ」
オレは顔を引きつらせながら、イオを見送った。
手持無沙汰なシンはふらっと酒場に立ち寄った。
この世界では、冒険者登録した時点で大人である。酒を飲むことも可能であった。
「今日はやめとこう。ぶどうジュース1つ」
なんとなく酒を飲む気分ではなかったシンは酒場の店員を呼び止めて注文した。
ぶどうジュースならワインを飲んでいるように見えるため、シンはよく注文していた。
「えっ!」
シンは全身の血が沸き立つのが分かった。
注文を受けた店員がシンの良く知る人物であったからだ。
「母さん!」
シンはつい口走ってしまった。
「えっ?」
店員の女性はきょとんという顔をした。
「あっ、ああ、人違いです。 母によく似てたものですから・・・・」
シンは慌てて、その場を取り繕った。
「そうなの、うふふ。私にも生きていたらあなたくらいの子どもがいたわ・・・・」
その店員の女性はそういうとカウンターに去っていった。
酒場にいた女性は、シンが今の人間になる以前、テオだったころの母であった。
彼女は元シェイパース夫人である。