ピンチ
「シュバは戦えそうか?」
シンはオオガエルに対峙しながら大きな声をあげた。
「ダメだ! 持ってきた回復薬を試したが、全く効果がない」
デンがシュバを抱きしめながら答えた。
シンは後悔していた。残金が乏しいため毒消薬を買うのを控えたのだった。
「シン! 早く治療しないとシュバがやばい! さっさといつものアレでちゃちゃっと片付けてくれ」
イオの切羽詰まった声がシンに届いた。
シンは迷っていた。鬼化を使えば、オオガエルを倒せるかもしれない。しかし、名一杯鬼化で戦って倒せなかった場合、力尽きて動けなくなってしまうからである。
そうなれば、パーティー全滅が現実化してしまう。使いたくても使えないのである。
シンはオオガエルの後ろに回り込んで再びオオガエルに鉄斧を打ち込んだ。
「ぼよよーん」
再びシンの攻撃は弾かれてしまった。
「くそっ、どこかに弱点はないのか!」
シンは焦っていた。
「ブッブッブッ」
再びオオガエルが鳴きだした。
「あ、あれは!」
再度オオガエルに飛びかかろうとしていたシンは、一転方向転換して壁際に向かって走り出した。
「ぶしゅーーーーーっ!」
オオガエルの背中からまたガスが噴き出た。
「みんな、息を止めろ!」
シン達は壁際で息を止めてやり過ごした。
「くそっ、ジリ貧だな! やるしかないか!」
シンは覚悟を決めた。
「ちょっと待て!」
シュバがもうろうとした意識の中、シンを止めた!
「えっ、シュバ大丈夫なのか?」
シンはいつでも鬼化できる状態でシュバに声をかけた。
「デン! あいつの近くまでオレを背負っていってくれないか!」
シュバが力なく声を振り絞った。
「シン、チャンスは一度だけだ!」
シュバはしっかりとシンの目を見て話しかけた!
「ああ、わかってる!」
シンはシュバの覚悟を受け止めた。
「じゃあ、行くだよ!」
デンはシュバを担いでオオガエルに向かって走り出した。
「ここだ!」
シュバはデンをオオガエルの手前1メートルで停止させた。
「ブラックボール改!」
シュバの手のひらに黒い玉が発生した。
シュバは最後の力を込めてオオガエルの右わき腹に投げつけた!
「ブシュブシュシュ」
黒い玉に接触したオオガエルの右わき腹は、大きな穴がすっぽり開いた。
「ぶしゅーーーーーっ!」
オオガエルの穴が開いた、わき腹からは毒ガスが漏れている。