山小屋2
「扉を開けた瞬間、わしの体はかたまってしまった」
老人は扉を開いたときの恐怖と衝撃を語った。
「今と違い魔王軍の大幹部のワシは魔王様を除けば最強であった。いやそう思っておった」
「そやつは、見た目は人間の姿だった。見た目通りなら100歳近いな」
「だが、明らかに人間ではない。わしはそう確信できた! わしは死を覚悟した」
「そのとき、奴はわしに」
「入って、扉を閉めろ」
「やつはわしを招き入れてくれた」
「寒かっただろう、これでも飲め!」
「奴はわしを招き入れて、飲み物まで出してくれた。敵意が全くないことが分かったわしは椅子のすわり、何故か自分のことや魔王軍のことや、なにからなにまで自然にペラペラと話してしまっていた」
「そうこうしているうちに、朝になり吹雪もやんでおった。奴は一晩わしの話をずっと聞いていた。そうだな、いうなれば懐かしそうにというか、楽しそうにかのう」
「誰かと話をしたのは、数十年ぶりだった。ありがとう」
「奴がそういうと、わしはいつのまにか森の中でひとり立っていた。わしがあったのは間違いなく伝説の竜王子だった。奴は自分のことを何も語らなかったが、わしにはそれがわかった」
「これがわしが竜王子にであった話のすべてだ」
マルオは老人の話に聞き入っていた。
そして、人間になる方法について、何もないことに気が付いた。
「そうじゃ、そなたが思ったように奴は何も語ってはおらん。しかし奴が元ドラゴンであったことは間違いない。それに、人間になる方法は奴しか知らないであろうことも確かであろう」
なんだか、とても不確かな話だな。マルオはそんな話しかないのかと思いがっかりした。がっかりいはしたが、もはやその話に飛びつくしか方法がないことも確かだと事実もそこに存在していた。
「私をその小屋に連れて行ってはもらえませんか。お願いします。私にはそれしか残されていないのです」
マルオは老人の足をつかんで土下座のような格好になり懇願した。
老人はとても迷惑そうな顔をして、本当に困っているようだった。魔王がいなくなって、自分の力はかつてのような強大なものでない。人間界に行くとなると、また人間に狙われたり、襲われたりする可能性が高い。今日会ったばかりのゴブリンのために、自分がそこまでする義理はない。
「んっ?待てよ!」
老人はあることに気が付いた!このゴブリンに頼まれて人間になるという話をしたが、ワシ自身も魔王様亡き今、人になるしか力を取りもどうすことができない!
「いいだろう、そなたは小屋まで連れて行ってやろう、しかし小屋までの道中、自分の身は自分で守れ、わしは自らのことで手一杯じゃ。わかったか」
老人は条件付きながらもマルオを小屋まで連れて行ってくれるという。
「ありがとございます。自分の面倒はみます」
マルオがそう応えたとき、東の空から朝日が昇った。