それぞれの休日
「疲れたな―」
イオはここ数日宿屋を隅から隅まで掃除していた。
「こんなもんでいいかな!」
「ここに埃がたまってるよ」
イオの赤髪の妻である。数日間ダンジョンに向かいながら、何一つ成果を上げてないイオの妻は怒っていた。
「冒険者は稼げると思って、あの人と結婚したのに、未だに銅貨1枚も稼いで来やしない。結婚は早まったかね」
イオの妻はホテルの帳簿とにらめっこしながら、愚痴をこぼしていた。
「あんた、男は長い目で見るもんだよ! あんたのお父ちゃんも昔はそりゃ遊び人だったからね」
青髪のママが娘である赤髪嫁に話している。彼女の夫は元冒険者である。2年前にダンジョンで亡くなるまでは、冒険者として素材や魔石を売って稼いでいた。夫が亡くなった後、夫が残したお金で売りに出ていた宿屋を購入したのである。
「でもお母ちゃん、あの人が稼げるようになるとは私には思えないよ・・・・」
赤髪嫁はまだ愚痴を続けている。
「その時は、離婚すればいいんだよ!」
青髪ママはサラッ言った。
「なるほど!」
赤髪嫁は、とてもすっきりとした気持ちになった。
「あー疲れたなー」
イオも愚痴をこぼしていた。
「さぼるんじゃないよ」
赤髪嫁の厳しい声が飛ぶ!
「はいっ!」
イオだけはすっきりしない1日である。
「こんなもんだな」
デンとクニ馬車の整備をしていた。
「やっぱりきれいな馬車を見ると気持ちいいな!」
「全くだ、こういう時間がたまには必要だ!」
デンとクニは馬車の整備をおえて、すっきりとした表情で宿屋に戻るのであった。
夕食の時間になり宿屋の1階の食堂にはパーティーメンバーが集合した。
「今日はどうだった?」
シンはメンバーに尋ねた。
「ああ、今日は大物が釣れた。さっきおかみさんに渡したから今日の夕飯は期待してくれ」
シュバはいきいきした目をしている。
「おれ達も久しぶりに馬車の整備して汗を流していい1日だったべ」
「うんにゃ!」
デンとクニも満足した表情だ。
「そうなんだ、オレも今日はいい買い物ができたよ」
シンもニコニコ澄み切った表情をしている。
「よし、今日こそはダンジョンの攻略の1歩を踏み出すぞ!」
シンは手を高く上げて、叫んだ。
「おおっ!」
シュバ、デン、クニの3人はシンに続いて雄たけびを上げた。
「次こっちだよ!」
「は、はいいい・・・・」
そのころイオは皿洗いに汗を流していた・・・・