自由時間
宿屋に到着したシン達は、精神的肉体的疲れでベッドに入るなり深く眠ってしまった。
「バカッ」
イオだけは、赤髪嫁に何やら殴られた後夜、遅くまで宿屋の掃除をしていたようだ。
「うーんっ」
シンは翌朝目を覚ました。
深く長く寝たおかげか、昨日の悲惨な出来事から、精神的にも肉体的にもある程度回復していた。
「みんなはどうしたんだ?」
シンは階段を下りて食堂に向かった。
食堂ではすでにシュバやデン、クニが食事をとっていた。
「おお、シン遅いぞ!」
シュバが手を振っている。
「昨日は悲惨な目にあったな」
シンは席について、昨日の話を振った。
「もうその話はしたくない!」
シュバは、多少引きずっているようだ。
「とりあえず、ご飯食べて元気だすだ」
デンはニコニコしている。
「どちらにしても、今日はもういけないから、また夜中に出発だな!」
クニは大きなパンにかじりつきながら、話している。
「確かに、今日は夜まで自由時間にするから、みんなそれぞれ好きに過ごしてくれ」
シンは見た目がどす黒いスープをすすりながら話している。
「オレは釣りにでも行ってくる」
シュバは今夜の夜飯はオレに任せろという顔をして胸を張った。
「期待せずに待ってるよ! オレは町を散策してくる」
シンはスープをお代わりした。
「オラとクニは馬車の整備してるだよ」
デンは両手にパンをもって口いっぱいにほおばってる。
食事を終えてシュバは宿屋で借りた釣竿をもってダンジョンの裏にある大きな池に向かった。
「おい、昨日の話聞いたか?」
「ああ、おまぬけな初心者のことだよな」
「はははははっ」
池に向かう途中でシュバ達の昨日の噂話があちらこちらから聞こえてきてくる。
「くそっ、馬鹿にしやがって!」
シュバは石ころを蹴りながら怒りをためて釣りに向かった。
池についたシュバはさっそく釣り糸を垂らして、近くの石の上に腰を掛けた。
1時間、2時間シュバの竿には全くあたりがなかった。どうやらシュバのイライラがさおに伝わっているようだ。
「ありゃりゃ、そんなにイライラしていたら、釣れるもんも釣れないぞ!」
シュバの隣で釣りをしていた、長く白いひげを生やした老人がシュバに声をかけてきた。
「わ、わかってるよ!」
シュバは、老人にいわれて、初めて自分がイライラしてるのを自覚した。せっかく釣りに来たのにこれではリラックスできないと、シュバは深呼吸した。
「よし大丈夫だな」
シュバは改めて釣り糸を垂らした。