案内係
「おれ達は、逃げ帰ってきたが、戦ってきた冒険者を笑うとは何事だ!」
シュバは仁王立ちになって怒りを爆発させた。
「あっははははははっはははははははははははは」
シュバの話を聞いてさらに、笑いが起こった。
「お前たち、いったい誰と戦ったんだよ?」
冒険者の一人がシュバに尋ねた。
「タキシードを着ていて見た目は人間のようだったが、あの強さは悪魔かもしれない!」
シュバは真剣に答えた。
「ぷふっ、そうか!なるほどな。ふふふふふ」
冒険者の男は笑いをこらえられなかった。
「失礼な!」
シュバは激高した。
「ああ、ごめんごめん」
冒険者の男は自らを頑張って落ち着かせて口を開いた。
「お前が言う悪魔っていうのは案内係のことだ!」
男はなおも半笑いだった。
「あ、案内係って・・・・どういう?」
シュバは戸惑って言葉にならなかった。
「この扉の向こうは確かにボス部屋につながってはいる」
「ただし、この扉を入ってすぐ現れるのは案内係だ。精霊なのか、天使なのか。その正体はわからないが、ダンジョンの攻略のレクチャーをしてくれる」
他の冒険者もシュバ達の反応を見てニタニタしている。
「じゃあ、オレが戦ったのは・・・・」
シュバは戸惑いを隠せない。
「ああ、ボスでも何でもない。 彼を攻撃することはできないと思うよ! おそらくその案内係も戸惑ってたんじゃないか!」
冒険者の男は話を続けた。
「とにかく、これはこのダンジョンに限ったことじゃない」
「どのダンジョンでも1階層のボス部屋の前には、必ず案内係がいて、そのダンジョンの使用なんかを説明してくれるんだよ」
冒険者の男は、少しかわいそうなものを見るような目でシュバを見ていた。
「まあ、これも勉強だと思って、今日は帰るんだな」
そのころ、すでに他の冒険者パーティーが扉に入っていた。
大笑いされた、意味がようやく理解できた、シン達は全員顔を真っ赤にして、ダンジョンをとぼとぼ歩いて出ていった。
「お、おれ達、有名人だよな」
シュバがボソッと話した。
「そうだろうな、おそらくうわさが広まって、この界隈ではおれたちを知らない奴はいないんじゃないか・・・・」
シンはうつむいている。
「ま、まあ気にするなよ。明日もう一度いって、今度は攻撃せずに案内聞こうぜ!」
イオは相変わらず能天気だった。
「イオの言う通りだ! こういうのもいい思い出になるだよ」
デンはシンとシュバの肩を抱いて励ましてくれている。
「はあーっ」
シンとシュバはやはり元気が出ないようだった・・・・