強敵
「ちょっと話を聞いてください」
紳士は何かをシン達に伝えようとしている。
「シュバまどわされるな!」
シンはシュバに魔法を打つよう合図した。
「ブラックボール!」
シンは必殺の黒い玉を紳士に向かって投げつけた。
「これでお前も終わりだ!」
紳士は余りに無防備である。シン達はこれで勝てると確信した。
「ぼわっ」
シュバの放ったブラックボールは紳士に当たる直前で無残に消滅した。
「えっ! そんなー」
シン達を絶望感が襲った。最大火力のシンの鬼化も、絶対のシュバのブラックボールがどちらも全く通用していない。
「だめだ! こいつはあの魔人よりも上かもしれない! 」
シュバは1歩2歩と後ずさりした。
「だから、話を聞いてください」
紳士は大きな声でシン達に訴えかけた!
「これは、何かが来るぞ! みんな逃げるぞ!」
シンの合図でシュバ以下全員が即座に逃げを選択した。これは事前の打ち合わせ通りだった。ゲームなら、死んでも復活できるが現実ではそうはいかない。少しでもかなわないと判断した場合、合図をしたら、問答無用で逃げるとパーティーで意志の統一をしていたためだ。
「ここだ!」
シンは問らの前に立って、他のメンバーを呼んだ!
シンには不安なことがあった。ボス部屋の扉が逃げた場合、中から開くのかと・・・・
「開いた!」
扉は予想に反して難なく開いた!
「扉が開いたぞ! 急げ!」
シン、シュバ、デン、クニの順でボス部屋を飛びだした!
「痛っ!」
イオは転んでしまった!
「あ、あのですね・・・・」
紳士はイオに優しく話しかけた・・・・
「ひ、ひえええええええええっ」
イオは生きた心地がしなかった。四つん這いになりながらボス部屋を飛び出した。
ボス部屋を飛び出してきたシン達の前には行列待ちの冒険者パーティーが列をなしていた。
「はぁはぁはぁ」
シン達は汗だくで息も絶え絶えだった。
「お、おいどうしたんだ!」
列の先頭の剣士らしい冒険者が、心配顔でシンに声をかけた!
「恥ずかしながら、今のおれ達では、1階層のボスにも敵わないようだ!」
シンはあえて、自分たちの恥を話した!
「1階層のボスって、戦ったのか?」
剣士はさらに質問した。
「ボス部屋に入ったら戦うのは当たり前だろう! だけどオレ達の攻撃は一切通じなかった」
シンは涙ながらに語った
「そうか、ははっははっはははははっははっはっはははははっは」
剣士は大笑いした。
「確かにおれたちのレベルはまだまだだ! だが戦って逃げることは恥だとは思わない!」
「それを笑うとは、恥を知れ!」
シンは大きな声で怒りを伝えた!
「あはははははははははははは!」
「ぶわっはははは!」
今度はボス部屋の前にいた冒険者全員がおなかを抱えて大笑いしたのであった!