山小屋
「えっ、本当ですか!」
マルオは思わず大きな声を出してしまった。
「ああ、本当だ!」
「ワシも詳しい話を知っているわけではない」
「ほとんど伝説みたいな話だが」
「今から300年ほど前の話だ。300年前というと、長い人間との戦いの歴史の中でも特に魔族と人間が激しい戦いをしていたころだ!」
「ある小国の姫と竜将軍と呼ばれたドラゴン族の王子が恋に落ちてしまった」
「そのことを知った王子の父である竜王は激怒しその怒りで大地が吹き飛び大きな山が一つ消し飛んだという」
「竜王子はそれでも姫のことをあきらめることができず、魔王軍との決別を誓った!」
「彼は魔王軍の追ってから逃げて姫のところに向かった」
「しかし当然人間界においても自国の姫が魔族と結ばれることなど許すはずもなく、竜王子は人間界に入ることさえ許されなかった」
マルオは老人の話をかたずをのんで聞き入っていた。
「追手が迫る中、竜王子はある禁忌を使い、竜の力を失いながらも人になったという」
「人の姿になった竜王子は、姫のいる城に忍び込み姫を連れ、その日のうちに国をでたという」
「魔族軍も、王国軍も二人を探したがとうとう見つけることはできなったという」
「ワシが聞いている話はこれがすべてだ」
「その禁忌とは、何ですか?」
マルオは老人に問いかけた。
「ワシにはわからん」
「知っているものはひとりいるがな」
「えっ? 誰ですか?」
マルオは老人に強く問いかけた。
「そうじゃな、そなたに話すべきか迷うところだが・・・・」
「教えてください! お願いします!」
「うむ、まあよいか! その竜王子だ!」
「竜王子は、今も生きておる!」
「竜の寿命は人間よりもはるかに長い、竜ならば生きているのはさほど不思議なことではない。しかし、人間になった竜王子がまだ生きていることは不思議なことではある」
「なぜ、生きていると知っているのですか?」
マルオはまるで見たことがあるような老人の話をきいて、いてもたってもいられなかった。
「ワシは数年前あったことがあるからな!」
「その時ワシは、人間界の調査のため、深い山の中を通って密かに人間界に向かっていた」
「3日3晩に及ぶ激しい吹雪と寒さで、さすがのワシもかなりまいっていた」
「その時、明かりのついた小さな山小屋を発見した」
「わしは、天候が収まるまで、その山小屋で過ごそうと扉を開けた。おそらく中にいるだろう人間のことは殺そうと思っておった」
「吹雪の中扉を開けて小屋にはいると、奴はいた」