プレジデンシャルスイート
シン達は人込みをかき分け、宿屋を目指した。
「いったいどこに宿屋があるんだ?」
シュバは人に酔ったようだ。
「あ、あそこに大きな看板が出てるだよ」
デンが宿谷の巨大な看板を指さした。
シン達は看板を目指して歩き出した。
「や、やっと着いたな」
20メートル進むだけで、10分かかってしまった4人は大きな宿屋の入口にたどり着いた。
ここにも大勢の人がいてロビーに入るのも一苦労だった。
「いらっしゃいませ! ご予約のお名前をお願いします」
ロビーにいた、ホテルのコンシェルジュがシン達に声をかけてくれた。
「すみません、予約はしてないんですが部屋はあいてますか?」
シンはコンシェルジュの男性に緊張して尋ねた。
「ご予約がないと難しいかもしれませんね、少々お待ちください! 確認してまいります」
コンシェルジュの男性は、いかにも田舎者のお金がなさそうなシン達にも優しく接してくれている
「いい人だな」
「そうだね、やっぱり都会の人は違うな!」
4人ともコンシェルジュの対応に感動していた。これまでシン達が泊ってきた宿の対応とは雲泥の差であった。
「お客様、大変お待たせしました」
コンシェルジュの男性は小走りでシン達のところに戻ってきた。
「いえいえ、こちらこそ予約もないのに、ありがとうございます」
シン達は、恐縮して応えた。
「私どもはこれが仕事なので、何もお気になさらないでください」
コンシェルジュの人はとてもニコニコして感じがいい。
「ただいま確認してまいりましたところ、本日はスタンダードルームや、デラックスルームが満室でプレジデンシャルスイートがあいております。」
「こちらの部屋は4人でお泊りになられてもごゆっくりお過ごしいただけるでしょう」
コンシェルジュの男性はシン達に宿泊者カードとペンを示してニコニコしている。
「そうですね、急だしちょっと高そうだけど、今日はそこでお願いします。みんなもおいいよな」
シンは3人に尋ねた。
「ああ、1泊だしな」
「たまにはいいだよ」
「楽しみだ」
3人ともシンに同意したので、代表してシュバが宿泊者カードに記入した。
「ありがとうございます。 本日は初めてのお泊りなので前払いの清算になりますがよろしいでしょうか」
コンシェルジュの男性は、トレイを出して支払いを求めた。
「はい、いくらでしょうか」
シュバは金貨が入っている袋を出して支払いをしようとした。
「こちらのお部屋は1泊金貨320枚でございます。」
コンシェルジュの男性は愛想よく答えた。
「えーーーーっ!」
シン達4人は金額を聞いて腰を抜かしてしまった。
シン達の全財産の5倍以上の金額であった。
「も、申し訳ないです。今これしかないので・・・・」
シュバは持金をコンシェルジュの男性に見せた。
「ちっ、貧乏人か!」
コンシェルジュの男性の表情を突然無表情になり、コンシェルジュが呼んだ警備員にシン達4人はホテルから荒っぽく追い出された。
「この貧乏人が! 2度とうちにくるんじゃない」
ここはダンジョン都市である、見た目が貧乏そうでも金を持っている冒険者は大勢いる。町一番の宿屋に来たシン達は、ダンジョン探索で大金を稼いだ冒険者だと勘違いされたようだった。