急変
普段と違うナンシーの様子にミトは戸惑っていた。あのやさしくて綺麗な憧れのナンシーさんが、どうして・・・・
「ナンシーさん、一体どうしたんですか。なんだかいつものナンシーさんと違うような・・・・」
ミトは必死にナンシーに話しかけた。
「まあいい、とりあえずこの洞窟から出て行け!」
ナンシーさんはとっても冷たい目でミトを見ている。
「えっ」
気が付いたら洞窟中のゴブリンがミトの周りに集まっていた。その中には母であるエリザベスもいる。
「か、母さん、どういうこと?」
ミトは優しい母であるエリザベスに話しかけた。
「・・・・」
エリザベスはミトの呼びかけに全く反応しない・・・・
「ど、どういうこと母さん!」
ミトは恐怖でエリザべスに叫んだ!
「・・・・」
やはり何の反応もない。
「よし、連れ出せ!」
ナンシーの呼びかけでゴブリンたちはミトを抱えて洞窟の出口に向かった。
「ちょ、ちょっとやめてよ! ミハエルさん!」
ミトはゴブリンに抱えられながら、先頭のミハエルに声をかけた。
「これはお前のためだ! ここで死ぬよりはいいだろう・・・・」
ミトの呼びかけに初めてミハエルが反応してくれた。
「ど、どういうことですか! ミハエルさん 僕はどこにも行きたくありません! ここのにいて僕はとても幸せです! ミハエルさーん!」
ミトは精一杯の大きな声でミハエルに訴えた。
「ここにいて幸せだと、そんな奴は必要ない! やはりお前は失敗だったのかもな」
ミハエルはそういうと、その後はミトの呼びかけに全く反応しなくなった。
ゴブリンたちは洞窟から出て、ミトを抱えたまま森の中を進んだ。
「よし、ここでいいだろう!」
ナンシーがそういうとゴブリンたちは抱えていたミトを前方の崖に投げとばした。
「わあああああああああああああああああああああああああああああっ」
ミトは数十メートル崖をぐるぐると回転しながら転げ落ちた。
「はあはあはあ」
ミトは奇跡的に無傷であった。
「急にどういうことだ!」
ミトは突然起きた出来事に思考が停止して固まっていた。