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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね53

 夜の宴会の場に、再び参加することは許された。一人の男子として改めてみんなと顔を合わせるわけで、会場に向かうのには緊張した。まぁ、恰好は今までと変わらないゴスロリ衣装で、化粧もばっちりしてるんだけどね。

 宴会場に行くとき、「一緒に行こうよ」と言ってくれた桜島さんの気遣いにまたまた救われた。

「赤目っチ! かまゆでにされてなかったですます!」

 会場に入ってすぐにレイラちゃんが助走をつけて跳びついてきた。押し倒されそうになったけれど、ぎりぎりこらえた。破壊力抜群の胸がおもっくそ押し当てられているわけだが、この子は僕が男子であることを本当に知っているのだろうか?

「に、におい付けないでよ!」と、相変わらずよくわからないこだわりを持った桜島さんが僕とレイラちゃんを引き離す。

「レイラさんは、赤目くんが男の子だってわかってるの!?」

「あたぼうですます!」

「より性質が悪い……!」

「けど、レイラちゃんがいつもみたいに接してくれて安心したぜ」

「おっぱい揉ませてくれたですますから!」

「結局大事なのはそこなのかぁ」

 男のおっぱいでも関係ないとね。

「でも、赤目っチはまだぼくのを揉んでないですます?」

「なななな、なななにを言ってるのレイラさん! 赤目くんに揉ませられるわけないでしょ! 赤目くんもわきわき両手を動かさないでよ!」

 桜島さんはいじりがいがあって苦労させられる人だなぁ。僕が如月さんに嫌われるようなことをするわけがないじゃないか。

 一通り戯れ終えた僕は、岸さん、天津川さん、佐々木ちゃんの三人のグループの方へ向かった。

「三人とも、だましててごめん」

「女装してまでボクっ娘のオーディションに潜り込んでくるなんてとんだ変態にゃー」と、ディスプレイ上に映る猫娘の岸さんがなじってくる。

「僕様は、貴様が男だなんて今でも信じられないぞ!」と、佐々木ちゃん。

「佐々木嬢にはまったくもって同意だ。ふむ……」

 僕の前まで歩み寄ってきた天津川さんがじっと顔を観察してくる。

「ボクさんは男装の天才という自負はあるが、赤目嬢はその逆で女装の天才だな。かわいいかわいいレディー達とまるで見分けがつかない。なんなら、このままボクさんが襲ってしまってもいいくらいだ」

 男装の令嬢が、女装の男子を襲うなんてどんだけカオスなシチュエーションだよ。でも、ありか? ありなのか? いやいや、ダメだ。それを肯定してしまったら変態度が高まってしまう。

「少なくともこの場じゃ勘弁してほしいぜ。あと、赤目嬢ってのはもう間違いでしょ」

「間違ってるかもしれないが、その姿をする限り呼び方はこのままでいいとボクさんは判断する」

 この子たちに関しても、僕を男だと認識しているのか怪しい部分はあるけれど、変わらず接してくれている。ありがたい限りだ。

 僕は部屋を見渡した。上座にある座布団には如月さんが座っており、そのそばに彼方ちゃんが立っている。八幡宮さんの姿は見えなかった。僕や桜島さんのように監禁されたという話は聞かないけれど、さすがにみんなと戯れるような状況じゃないか。自分の部屋に引きこもっていると考えるのが妥当だろう。

 この旅館の主である彼方ちゃんにも謝っておかないとね。

「ごめんね、彼方ちゃん」

「お客人の方々が許してくれたからいいものの、本来ならば木刀の染みになってもらっていたところですよ」

「うん、みんなには感謝しかないぜ」

 如月さんが下から僕をまじまじと見つめているのに気づく。どうせまた「男だとは思えない~」だとか思われているのだろう。

「僕の顔になにかついてる?」

「いいえ。別になんでもございませんわ」

 たくさんの具材が入ったシチューをかき混ぜてたみたいにいろいろな感情が入り混じっているのか、如月さんは複雑な表情をしている。

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