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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね48

 そう。何度も言うが、僕はこの人が苦手だ。ボクっ娘の負の側面を見せてくる。それが、嫌だ。

 だけれど、僕は八幡宮さんが嫌いなのだろうか?

 逡巡。

 嫌い、ではないな。苦手ではあるが、嫌いではない。

 あぁ、そうだ。なんで嫌いになれないのかを思い当たったよ。

 僕は、ボクっ娘の負の側面であろうとも愛しているんだ。だって、それを含めてボクっ娘だから。

 悪役だろうと、悪女だろうと、悪人だろうと、ボクっ娘ならばそのすべてを受け入れたい。

 そして、なにより。

 ボクっ娘が悪役から脱しようとしている。僕にその手助けができるのなら手伝いたい。

 そう気づけた瞬間に結論は出た。

 実に単純で、実に安直。我ながらバカだと思う。

「八幡宮さん、僕が犯人になる。だから、次は、今度こそは、正々堂々戦ってほしい」

「なにを言ってるのかしら?」

「君が生み出した幻像に、僕がなる」

 もしかしたら、僕がこの場に来たのは運命だったんじゃないか。ボクっ娘の間違いをただすために、この場にいたのかもしれない。僕は本来ロマンチストではないけれど、そうとしか思えないような状況だった。

「実は、僕は男の娘なんだ」

「は――?」

 面の皮の厚さに定評がある八幡宮さんでも、口をぽかんと開けて驚きをあらわにする。

「正真正銘、本物の、偽りだらけの、純度百パーセントの男子だ」

「あんたが、男?」

「そうさ。だから、これ以上にないくらい説得力を持って、八幡宮さんが作った犯人像に一致しちゃうんだぜ」

「大丈夫? 頭でも打ったんじゃないかしら? あんたはどっからどう見ても女の子よ」

「……」

 せっかく男の娘だと名乗り出たのに、まさか信じられないとは! 逆に男として傷ついちゃうぜ。

 犯人に成り代わる前に、男の娘である証明をしないといけないなんて。

 一番手っ取り早いのは、男にのみ付く例の物を見せることなんだけど、できればやりたくないぜ。

「無理やり僕が男だって証明する方法は、あまりとりたくないんだけど、八幡宮さんがどうしてもって言うなら、触らせるけど」

「触らせるって」

「もちろん、僕のちんちん」と、かわいらしく言ってみる。

「……」

 その蔑むような目はやめていただきたい。だって、これ以外に手っ取り早く僕の性別を証明する方法はある? DNA鑑定でもできるなら話は別だろうけど、吹雪によって隔離された温泉旅館では実行に移せるはずもない。現実的な方法があるのならば、ぜひ僕のスマホまでお電話一本入れてもらいたい。

「まぁ、八幡宮さんに確かめる度胸はないか」と、やけくそ気味に八幡宮さんを煽ってみる。

「はあ? いいわよ。確かめてやろうじゃない」

 強気で負けず嫌いな八幡宮さんは、あっさり僕の煽りに乗っかってくれた。

「スカートの上、ドロワーズの上、直、どの方法かは八幡宮さんに任せるぜ」

「スカートで」

 案外控えめな選択肢を選んできたぜ。

「スカートの上からで十分ってことよ。別にびびっちゃいないわ」

 僕の心の声を読まないでほしい。

 決闘する武士よろしく僕達は立ち上がって向かい合う。ドロワーズと分厚いスカートの上からわかるかな。心配だぜ。

「さ、触るわよ」

 八幡宮さんの声が若干上ずっているように聞こえた。

 策の中にコンドームを組み込むような子がいまさら男の一物の一本や二本で動揺するわけなんてないよね。

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