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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね41

「ほんとですます!?」

 泣いていたのが嘘のように、勢いよく上半身を起こすレイラちゃん。もしかして、僕は泣き落としにあったの? だとしたら、レイラちゃん悪女説が浮上したぜ。

 わきわきと動くレイラちゃんの手が僕の胸に近づいてくる。

 今度は僕が涙ぐんでしまう。おっぱいを揉まれるってのは、こんなに恥ずかしいのか。くそ、レイラちゃんめ、触ろうとしては手を引っ込めて微妙にじらしてきやがる――! 手慣れてるぞ!

「さっさと終わらせようぜ!」

「フフフ……、いただくでーすます! これは? PAD!」

「僕は、胸に自信がないから付けてるんだ。それがバレたくなかったから、揉ませたくなかったんだぜ」

 さて、これでまた背負うべきリスクが増えてしまうが、どうなる?

「それを先に言ってほしかったですます! あーあ、赤目っチにきらわれてると思ったですます」

 とりあえず、レイラちゃんが僕の性別を怪しんでいる様子はない。

「十分すぎるくらい十分に胸があるレイラちゃんにはわからないかもしれないけれど、女の子にとって胸がないのは痛手なんだぜ」

「赤目さんも本心ではそう思ってるんだ……。はぁあ、ボクの胸なんて工場のプレス機にでもなればいいんだよ」

 しまった。誤射した。桜島さんがめんどくさい卑屈モードに入ってしまった。

「これでぼくと赤目っチ友達ですます!」

 ガバッと、レイラちゃんが僕に飛びついてきた。回避できずに押し倒されて、すりすりと頬ずりされる。僕とは比べ物にならないつるりとした肌と、押し当てられる胸部の爆弾に目が回った。

「ちょ、ちょっと、赤目さんに勝手にマーキングしないでよ!」

 桜島さんがレイラちゃんを引き離してくれたおかげで、危うく発動しそうになった生理現象はバレずに済んだ。てか、桜島さんさらっとマーキングとか言ってたけど、どんだけにおいに敏感なのさ?

「他の人たちには、僕の胸にパッドがあるなんて恥ずかしいから言わないでほしいぜ」

「りょーかいですます!」

 幸い、分厚いパッドの下にある男の胸は、レイラちゃんにはバレなかったようだ。このおっぱいソムリエなら、もしかしたら看破するかもとは思ったけど、杞憂に終わった。あとは、レイラちゃんが余計なことを他の人に言わないかを祈るだけ。この子、口が軽そうだから心配だなぁ。

「よし、彼方ちゃんのおっぱいを揉みに行こうぜ」

「はいですます!」

「今度は木刀振りまわされそうだけど、レイラさん、大丈夫かな」と、心配そうに桜島さんがつぶやく。

 うん、その点は僕も心配だ。もしも暴れられたら、僕がせいぜい体を張って抑え込むようにしよう。八幡宮さんのときは拳で済んだけど、木刀は笑い事じゃ済まないからね。

 彼方ちゃんは一階にある厨房にいた。そこは、火を扱っているおかげで、他の部屋よりもさらに暖かく、ずっといたら汗がにじんできそうなくらいだ。客室一部屋分のスペースに調理器具がずらっと並んでいる。彼方ちゃんは、昔ながらのガスコンロの前で大きな鍋をお玉でかき混ぜている。台座を使って身長を誤魔化さないと、お鍋を上から見られない点は可愛さポイントが高い。

 彼女のそばには護身用の木刀が置かれている。あれからは引き離したいぜ。

「彼方ちゃん、時間あるかな?」

「? あとは食材を煮込むだけになりましたので、ちょうど時間はできたのですよ」

 火のある場所は危ないので、彼方ちゃんを一度廊下に連れ出す。その際、木刀は持ち出されなかった。よし、これなら僕が痛い目をみなくても済みそうだ。

 さて、野獣を解き放つとしよう。廊下に待機させていた異星人に指示を出す。

「レイラちゃん、やってもいいぜ」

「おっぱい!」

「ちょ、なにをするのですか!?」

 木刀がなければ、彼方ちゃんはただの小さな女の子だった。レイラちゃんの襲撃になすすべもなく、背後から体を抑え込まれる。そして、そのままおっぱい星人にキャトルミューティレーションされた。

「ちっちゃくてかわいいですます!」

「離すですよ! おっぱい揉んで喜ぶとか小学生の男子ですよ!?」

「いーやーでーすーまーす」

 うん、彼方ちゃんの性別も問題なさそうだ。さて、これでこの館にいる僕以外の人間が女の子であるのは証明された。

「ほら、レイラちゃん、もうおしまいだぜ」

「もうちょっとだけ。こぶりなのしゅきぃ」

「そろそろ彼方ちゃんがかわいそうだから。泣いちゃうかもしれないから、ね?」

「泣くわけないですよ! お客人なので穏便に済ませようと思ったのですが、堪忍袋の緒が切れたですよ!」

「ぐふっ!?」

 きれいな肘うちがレイラちゃんの腋の下に入った。おっぱい星人は本日二度目のダウンだ。床でビクンビクンと痙攣している。よっぽど痛かったみたいだ。ごめんよ、レイラちゃん。僕はまた君を守れなかった。でも、幸せそうだしいいか。

「仲がいいのはけっこうなのですが、今は非常時ですから、あまりこういうことはしないでほしいのですよ」

「ごめんなさい」と、素直に謝っておく。

 地面に伏せるレイラちゃんに肩を貸して、部屋まで送り届けた。そこでレイラちゃんとは別れる。

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