この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね38
レイラちゃんは、休憩所の自動販売機の前で、一人退屈そうにジュースを眺めていた。
「レイラちゃん」と、僕が声をかけると、パッと振り返って満天の星空に浮かぶ花火のような笑顔を浮かべて「赤目っチ~~~!!」と、跳びかかってきた。具体的には、僕のおっぱいを狙ったダイブ。
「あぶなっ!」
とっさに肩を抱きとめて、胸を揉まれることだけは阻止する。
「なぜ防ぐですます?」
一文字に切られた前髪の下にある碧い瞳が不満げに細められる。
「僕は揉まれたくないからだぜ」
「なぜですます? こくさいこみゅにけーしょん」
「その間違った考えは今すぐ是正すべきだよ」
「まず、ぼくの揉むですます?」
胸を張るレイラちゃん。たゆんたゆんのそれが僕の前で揺れる。
「……どうしよ」
「赤目さん、そこで黙らないできっちり断ろうよ!」
「くっ、そうだな。揉めないぜ」
「名残惜しそうにしないでよ」
はあ、と桜島さんは大きくため息をついた。
「代わりに桜島さん、頼んだぜ」
「そういえば、ボクの役目だったね……」
「桜っチ揉む?」
「残念ながらね」
残念どころか、むしろご褒美でしょう。
桜島さんが意を決したように頷く。
「大きい……」
ごくり、と桜島さんが唾をのんだ。やっぱり同性でも圧倒されるサイズなんだろうね。目で自分のとレイラちゃんのを見比べて「ボクのなんて産業廃棄物だよ……」と、落ち込んだ。
「サイズは関係ないぜ」
「別に気にしてないよ!」
変なところで見え見えの嘘をつくね。
ごくりと唾をのんでから、桜島さんはその手でレイラちゃんの胸を鷲掴みにする。実に――実に羨ましい光景だった。
「やわらかい。うぅ、ずっと触っていたくなるような感触。こんなの勝てないよ」
感嘆のため息を漏らす桜島さんだった。
やっぱり無理やりでも僕が揉むべきだったぜ。ちょっと後悔してしまう。
「確認の必要もなかっただろうけどさ、本物に間違いないよ」
「またおともだち一人増えたですます!」
レイラちゃんの<おともだち>はやはりおっぱいを揉むか、揉まれるかして初めて成立するのだろう。
確認すべきことは確認したので、次はお誘いに移る。
「レイラちゃん、今は一人でいると危ないぜ」
「そうですますか?」
「だぜ。だから、僕達と一緒にみんなのおっぱい揉みに行こうぜ」
「ひかりのはやさでいくですますっ!」
「二人とも、バカだよ」と、頭痛でもこらえるみたいに桜島さんが頭を押さえる。
事情の説明一切なしに、「おっぱい揉みに行こう」でついてきてくれる扱いやすさに感謝だ。
とにもかくにも、レイラちゃんの協力を一瞬で取り付けられたわけだし、この館にいるボクっ娘の調査もとい襲撃にさくっと行くとしよう。
「他の人は自分の部屋にいるのかな?」
「そうだと思うぜ。こんな危険な状況で出歩くなんて、レイラちゃんくらいしかいないはず」
というわけで、三階に戻って一人一人部屋を訪問していく。
ハードルが低そうな順に襲っていくことにしよう。
まずは、デウスエクスマキナこと佐々木ちゃんかな。この子はちょろそうだ。機械仕掛けの神様の部屋の扉をノックする。
「な、ななななな何者だ!?!? 男か!? 男の娘か!?」
めちゃくちゃてんぱった声だ。機械仕掛けの神にふさわしい貫禄はまるで感じられないぜ。
 




