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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね33

「この中に混ざる男の娘は、どうやら本気で死にたいようですわ。自殺願望でもあるのでしょうか? だとするのなら、その願いを叶えて差し上げてもよろしいのですが」

 その夕食は、朝の緊急集会に引き続き、如月さんの極寒の笑みからはじまった。宴会場の気温がやたら低い気がするんだけど、ちゃんと暖房効いてるの? もしかして暖房器具が壊れてるんじゃない? あー、早く今日の夜ご飯のお鍋を食べてあったまりたいなぁ(現実逃避)。

「本題を話さずに、なに一人でぶちぎれてんのよ。なにがあったかさっさと僕ちゃん達に説明しなさいっての。時間の無駄だわ」

 凍てつく波動を振りまく如月さんに対して、腕を組みながらいらだった様子の八幡宮さんが説明を促す。この人は、本当に恐れをしらないね。

「失礼しましたわ。もしかしたら、少々刺激が強い事実になるかもしれませんので、心してお聞きくださいませ」

「了解にゃー」と、バーチャルアイドルの岸さん。彼女が映し出されるノートパソコンは、椅子の上に置かれている。ノートパソコンのカメラで宴会場の様子を把握できるようにするために用意したのだろう。

「先ほど、コンドームが見つかりましたわ」

「に゛ゃ?」

 ぴしりと、画面上の岸さんの顔が引きつる。最近の3Dモデルってよくできてるよね。

「それってぼくにゃん達の貞操の危機かにゃ?」

「岸さんは大丈夫でしょ」

 突っ込んでもらいたいからボケたのだと判断した僕は、苦笑いしながら言う。

「あ、そ、そうだったにゃ。バーチャルアイドルのぼくにゃんは、3Dモデルを配布されない限りは無敵にゃ」

 そういえば、3Dモデルが配布されて大変な目にあわされた電脳空間のお方もいたなぁ。

「嗚呼、ボクさんは一体全体どんな目にあわされるのだろう! 姿の見えぬ乱入者とは、実に困ったものだ! クローズドサークルで、正体不明の元祖と言えば、かのU・N・オーエン氏の名が浮かぶな! 今回のオーエン氏は殺人鬼ではなく、変質者のようだがね!」と、両手を天に掲げながら男装の麗人である天津川さんは言った。こんな状況なのに、この人は楽しそうだ。

「貴様、どうしてそんなにはつらつとしているのだね! 僕様の――僕様の初めてが無理やりだななんて! それだけは嫌だ! 嫌だぞ! 誰なのだ! この館に忍び込んだ変態不審者は!」

「落ち着きたまえ佐々木嬢」

「デウスエクスマキナだ!」

 混乱の極みにあっても、条件反射的に佐々木であることは否定するんだね。

「では、デウスエクスマキナ嬢。機械仕掛け神の品格を保とうではないか。もし、卑劣なオーエン氏が現れたらボクさんが守って差し上げよう」

「なんなら貴様が一番怪しいのだが……!」

 佐々木ちゃんは、ぎりぎりと歯噛みをする。

 天津川さんと佐々木ちゃんはなんやかんやで仲がいいような気がするぜ。

「は、コンドームね。ずいぶんやる気満々な不審者じゃない。嘘だらけの世の中で、欲望に素直なやつは嫌いじゃないわよ。僕ちゃんの元に来れるなら来てみなさいよ。返り討ちにしてやるわ」

 八幡宮さんは相変わらず強気だ。この人に怖い物はないのだろうか。

「みんなさっきだってるですます。おなべはせんそうですます?」

 レイラちゃんに至っては、なんにもわかってねえ! みんなで一つのお鍋を食べるなら戦争になるけど、今回は一人一つずつ小鍋で用意されてるぜ。

「レイラちゃん、コンドームって知ってる?」

 桜島さん、冷めた目で僕を見ないでくれ。自分でも変質者チックな問いだってわかってるぜ。でも、この状況は、レイラちゃんにも共有しておくべきだ。犯人は僕だけど、この子があまりにも危機感なく僕に迫ってきたりしたらまた理性のタガが緩みかねないからなぁ。一度、他者に対する心の壁をこの子に作る。

「きつねがいっぱいるたてものですますか?」

「うーん、全然違う!」

 コーンでキツネ、ドームで建物を連想したみたいだ。

 この子、おっぱいおっぱい言ってるけど、たぶん性知識は小学生レベルで止まってるよ。海外の低俗な汚い言葉、エロい言葉が頭に残る原理が働いてると思われ。

 なんて説明すればいいんだ? 具体的に説明しても、理解できるかな。

 レイラちゃんにわかるように簡単に説明すると。

「おっぱいハンターがいる」

「おっぱいの危機ですますかっっ!?!?!?」

 たぶん、危ない状況にあるってのは伝わったんじゃないかな。

「そう。だから、レイラちゃんも気をつけるんだぜ」

「はいですます! しょーじんするですます!」

「よろしい」

「赤目さん、レイラちゃんの扱いに慣れてる……」と、呆れ気味に桜島さんが言った。

 この子とはけっこう話してるから、いい加減思考パターンが読めてきたぜ。

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