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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね29

「どうしました? お顔がにやけてますわよ? なにかいいことでもありましたか?」

 僕としたことが、女子としてあるまじきはしたなさを! 自分のほっぺたを両手でぺちぺちとたたく。

「如月さん、報告があるぜ。桜島さんは男の娘じゃない」

「本当ですか?」

 アリスが不思議の国を初めて見た時、きっとしただろう驚きの表情を如月さんは浮かべた。

「変態チックな部分もあるけど、聞いてほしい」

 僕が出した結論を如月さんに説明する。トランクスの折り目、普段着る下着には折り目がないこと、桜島さんの性癖、それゆえに男の娘と偽る決断をしたこと。

 それを聞いた如月さんは、腕を組んでうぅんと唸った。

 僕の突拍子もない話を信じるか否か、吟味している様子だ。

 如月さんは、うんと頷いた。

「桜島様、なかなかの変態ですわ……。あのお方が男の娘と聞かされたときと同等かそれ以上の衝撃をぼくたんは受けております」

「だろうね。僕も自分で仮説を立てておきながら、真実だったときは驚いたぜ」

「桜島様が男の娘でない証拠は」

「まだないぜ。けど、男の娘である証拠もない。桜島さんの自白しか確定要素がなかったわけだけど、今はそれがないしね。僕的には、犯人でない可能性が高い桜島さんを捕えっぱなしにして、真犯人を自由に動ける状況を作る方が大事だと思うぜ。一度、桜島さんを解放しよう」

 如月さんはうぅんと唸った。

 如月さんが取り得る選択肢には、<桜島さんを解放せずに真犯人を探す>があるけれど、それは彼女の判断にゆだねるしかない。

「まぁ、このオーディションに参加する方は基本的に一癖も二癖もある方ばかりですから、彼女もまたそうだったのでしょう。わかりました。一度、桜島様には部屋を出ていただきましょう。あの部屋の鍵を開けてきます」

 如月さんは、ソファから立ち上がって僕が入ってきた扉を開ける。

「赤目様がいてよかったですわ。無辜のボクっ娘を救うことができました。ぼくたんだけだったらあるいは――」

 <あるいは>の後は、如月さんは言わなかった。彼女の言葉の端からはぞくりと背筋が凍るような冷気を感じた。外の吹雪にも匹敵するこの悪寒。今は間接的にしか僕は味わっていないが、もしかしたらそれは僕に直接向けられるかもしれないのだ。

 大好きなボクっ娘に嫌われるのは、嫌だな。でも、嫌われるだけのことをやっちゃってるからね。罪には、罰だ。

「しかし、となると、男の娘は誰なのでしょう。振り出しに戻りましたね」

「そ、そうだね。また探すしかないぜ」

 ぎこちなく笑いながら僕は答えたのだった。

「赤目様の推理力でしたら、案外すぐに解決できてしまうかもしれませんね」

 如月さんの期待を酷く重く感じる。

 僕に任せている限り、一生解決することはないぜ。

 <赤目薫が男の娘である>

 この事実を如月さんに伝える選択権を桜島さんに押し付けたのは、きっと自分から言い出す勇気がないからだ。

 監禁部屋から桜島さんが解放されたことが如月さんの口から告げられたのはそのすぐ後だった。

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