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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね28

「あ、あのトランクスは履くためじゃないにしても、ボクが男の娘であるのにはかわりないよ」

 ……意外と粘り強い。僕の主張に証拠がないのをしっかり見抜いている。あっさり折れてくれると予想していた僕のあては外れた。

 この時点で、認めて欲しかった。

 でないと、僕は切り札を、ジョーカーを切らざるをえない。

 仕方がない。覚悟は決めてきた。一気に畳みかけてやろう。

「桜島さんが男の娘ではない証拠であり、僕のとっておきの秘密、それを教えてやるぜ。僕がこのオーディションに忍び込んだ男の娘だ」 

「え――?」

 桜島さんの最後の退路を潰す諸刃の剣。もう後戻りはできない。

「赤目さんが男の娘って……嘘をついてもだめだよ。ありえないよ。めちゃくちゃかわいいのに」

「かわいいと言ってもらっても、正直複雑な気分だぜ。でも、かわいさは関係ない。僕は男の娘だ」

「赤目さんが男の娘って証拠はどこにもないよ」

「ないぜ。証拠を作らないように立ちまわってきたつもりだからね。でも、もし、このまま桜島さんがこの部屋を出ないなら、僕は自分から如月さんに男の娘だと名乗り出る。きっと、身体的なチェックを如月さんはやろうとしないだろうけど、無理やり全裸になってでも男であることを証明してやる。君は、裸になって男を証明することができるかい? できるはずがないよね」

「……どうして、そんなことするの? 仮に、赤目さんが男の人だとしたら、きっと女の子と……え、えっちぃことをするために変装してきたんだよね。今捕まったら、それが果たせないんじゃないの?」

「その点については大いなる誤解があるぜ! 僕がここに来たのは、最初から最後までただ一つ。<February>のオーディションに参加しているきらきらしたボクっ娘を愛でにきただけだ! 誰が襲ったりするもんか! 誰が傷つけたりするもんか! 僕は、大好きなボクっ娘を間近で見たい――それだけなんだ!」

「そのためだけに女の子の真似して、オーディションに……だとしたら、変態だよ……」

「この際変態でけっこう! だけどだ。桜島さん、君には絶対にアイドルのオーディションに戻ってもらうぜ。君は、言葉でなんと言おうとも、心の底では純粋にアイドルを目指している。そんな子が、こんなくだらない理由で夢を諦めるべきじゃない。だから、出てきてほしい」

「……赤目さんは、変態な上にバカだよ」

「ネットの友達にもよく言われるぜ」

「でも、赤目さんは一つも嘘をついてない気がするよ。まぶしいくらい、まっすぐ」

「出てこようぜ。如月さんにだけは、あのトランクスを持っていた理由を説明しないといけないけど、そのほかの人には、言わずに済むと思うから」

 息がつまるような長い長い沈黙があった。

 特殊な性癖がもう一人にバレるのに、酷く抵抗があるのだろう。

 これで、桜島さんが出てこなかったら僕はいよいよ本物の変態にならざるを得ない。つまり、如月さんの前で……うん、それは避けたい。

「恥ずかしいけど……うん、わかった。赤目さんは、どうするの? ボクが部屋を出たら男の娘であるのを自白するの?」

「残念ながら、僕はこれでも、できるならまだバレたくないからね。卑怯と思うだろうけど、桜島さんが出てくるなら僕は言わない。桜島さんが如月さんに僕のことを言うのなら止めないよ。それで、僕は絶対に恨んだりしない」

「ボク次第って……うぅ、ずるいよ。決断をするのは、ボクがこの世で一番苦手なんだ」

 うん、そんな気はするぜ。僕の処遇は置いといて、桜島さんにはさっさと部屋を出てもらわないとね。

「じゃあ、僕は如月さんのとこに行ってくるよ」

 再三如月さんがいる部屋へと戻った。

「おかえりなさいませ」

 主人の帰りを待っていた妻であるかのように如月さんが僕に微笑みかけ、出迎えてくれる。こんな風に毎日如月さんにおかえりを言ってもらえたら、それだけで人生の勝ち組って言えるだろうなぁ。

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