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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね26

「如月さん、桜島さんの部屋から見つかったっていうトランクスはまだある?」

「はい。彼女の部屋にトランクスがまだ残っているはずですわ」

「それが発見された時の部屋の状況は、保存されているってこと?」

「はい。その通りでございますわ」

 トランクス一枚でなにが確かめられるかはわからないけど、一度見てみる価値はあると思いたい。

「桜島さんの部屋を見せてもらうことはできる?」

 言ってから、実質的に桜島さんの荷物を勝手にあさる行為であるのに気づく。さすがにマナー違反な提案か。

「いいと思いますよ。相手が男の娘であれば、人権はありませんし、そうでないケースが万が一でもあるのなら、彼女を救う行為にもなるはずですから」

 意外にもGOサインが出された。やっぱりここでは男に人権はないってはっきりわかんだね。監禁で済んでいるうちはまだいいのかもしれない。

 桜島さんには悪いけど、勝手に部屋を見させてもらおう。

「予備の鍵を取りに行きましょう」

「うん」

 一階にある管理室の金庫に予備の鍵はすべて入っているらしい。如月さんはそのパスワードを知っているようで、六桁の暗号を入れると中からカギを一つ取り出した。

「このパスワードを知ってるのは、如月さんと彼方ちゃんだけ?」

「はい、そうですわ。鍵をどうぞ」

「ありがとう。じゃあ、行ってくるぜ」

 これから、僕は女の子の部屋と持ち物を勝手に物色するわけだけど。なにを見ても冷静に、そして、変な気を起こさないように、だ。 

 深呼吸をしてから桜島さんの部屋に入る。そして、玄関でおでこ靴を脱いでからまた一呼吸。いつも桜島さんから漂ってくる桜の花の香りがうっすらと漂っている。ただ一晩女の子が過ごすだけで、その子の香りが染みつくものなんだね。って、いけないいけない。これじゃあ変質者じゃないか。冷静に、冷徹に、冷酷に、さながら血の凍った殺人鬼のように行動しなければ。

 畳の居間には布団が敷かれている。布団の傍らには、キャリアバックが置かれており、横に倒れて中身を晒した状態になっていた。たたまれた状態の服、化粧品がまとめられたポーチやスケジュール帳がある。さらに、桜島さんが昨日着ていた丈の長いニットシャツが乱雑に置かれていた。

 問題のアイテムであるトランクスは、布団の傍らに投げ捨てられていた。現場が手つかずで保存されているのは本当らしい。

 無造作に放り捨てられたトランクスをつまんでみる。

「なんだか……」

 使用感がないような気がする。新品ってわけじゃないけど、常にきっちりたたまれていたかのような折り目がついている。洗濯物をたたむお母さんが超超几帳面だとしても、こんなに折り目はつくかな? 履いているうちに消えると思うんだけど。これは、日頃からハンカチ代わりに使っているみたいな折り目の付き方だ。

 たぶんだけど、桜島さんはあまり几帳面な方ではない。それは、脱ぎ捨てられっぱなしのニットシャツを見ればわかる。よくよく観察したら、ホットパンツと下着も微妙にニットの下から覗いている。人は見かけによらないぜ。

 ふと、閃いた。キャリアバックの中にあるまだ履かれていない女の子用の下着を見る必要があるんじゃないの? もし、これに折り目がなかったら、トランクスの折り目の不可思議さがより大きくなる。

 そう、これは調査のためだぜ。決してボクっ娘のパンツが見たいとか、やましい心は一切ない。桜島さんの身の潔癖を証明するためには必要な過程なんだ。

 おい、落ち着きやがれ僕の心臓と呼吸。これじゃあまるで変質者じゃないか。いや、すでに変質者だった。

 ええい! ままよ!

 キャリアバックを漁って一着の下着を取り出す。桜の花びらのワンポイントマークが入ったシンプルなおパンツだ。

 これを普段から桜島さんが履いているのか。テイクアウトしてもいいかな。いけない、嗜好に邪念が入った。目的を忘れるな。

 下着には折り目は入ってないぜ。下着をたたんだときに折り目が付くほどきれいにたたむ習慣はないようだ。

 なら、なぜトランクスには折り目が付いていたか?

 じっと桜島さんの下着を眺めながら思考を巡らせる。

 ハンカチみたいな折り目――か。

 桜島さんのカバンの中から<もう一つのアイテム>を取り出して、その状態を確認する。

 仮説なら閃いたよ。これはちょーっとデリケートな問題になるかもね。桜島さんが出てこようとしない理由も予想はついた。

 けど、どうしよう。僕の仮説が仮に正しいとしたら、彼女をあの監禁室から出すのは困難だ。

「……一つ、賭けに出てみようか」

 僕は一つの決断をして、桜島さんの部屋を後にした。

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