この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね14
「桜島が練習をしてただなんて、他の人には言わないでね?」
「そのの気持ち、わかる気がするからわざわざ言わないぜ。それに、桜島さんの頼みとあれば墓場まででも持っていくぜ」
「そ、そこまではしなくても大丈夫だよ。でも、ありがと。やっぱり赤目さんはいい人だね」
桜島さんがポンと手をうつ。
「そうだ。もし、赤目さんがよければ、一緒にお風呂入りにいかない? ここの大浴場、すっごく評判いいんだよ」
「うっぷ!」
その誘いには、きっと深い意味はない。さっき手を繋いでほしいとお願いされたときのように、女の子が女の子を誘っているだけにすぎない。アナスタシアさんと結んだ鉄のおきてに反してしまうので、このお誘いだけは絶対に受けではいけない。
「だ、大丈夫? もしかして夜ご飯食べ過ぎた?」
「いや、違うぜ。ごめんけど、お風呂には一緒に入れない。ちょっと用事があるからね」
「そうなんだ。うん、仕方ないよ」
うまい言い訳が思いつかなかった。桜島さんの断られて寂しそうな表情が僕の罪悪感を駆り立てる。ほんとにごめんよ……。でも、これは桜島さんを守るためでもあるんだ。
「また、今度時間があるときにでも一緒に入ろうよ」
「うん、また今度」
できもしない約束をした後に、僕は桜島さんと別れたのだった。




