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せっきょうしようかい

作者: ダルシン

読み終わったあとに、くだらねーーーといっていただければさいわいです。

  諸戸は怒っていた。

 それというのも諸戸が任されているD班の営業成績が悪すぎるからだ。六か月連続最下位を記録している。

 そのことで上司からたっぷりと説教をされてきたところだ。

 その上司は実は同期入社の奴だった。入社した当時はよく仕事帰りに飲みにいった仲だったが、ずいぶんと差がついた。

 説教の終わりはいつもそのことを言われる。今までしてきた努力が違う。お前は学ぼうとしていない。そしてついに今日はこう言った。


「さっさと成績あげて来い、くそ河童」


 くそ河童・・・。

 たしかに諸戸の頭頂部は禿げ上がっていた。そのあたりも同期の上司とはずいぶんと差がついてしまったのだが。

 頭のことを言われるなんて、屈辱だ。

 諸戸は部下を集めて、あらためて部下ひとりひとりを見る。

どいつもこいつも間抜け面だ。

 こいつらのせいで俺は。

 怒りが込み上げてくる。


 今からせっきょうしようかい。


 まずは町田。さぼりの常習犯だ。おおがらで毛深く、指にまで濃い毛が生えている。何度かいっしょにサウナに行ってこの男の裸を見たことがあるが、脛毛腕毛にあきたらず胸から背中から毛だらけた。そのくせ頭は見事に禿げ上がっている。

 俺がくそ河童なら、こいつは何だ。

 丸顔のスキンヘッド。まるで満月じゃないか。

 そして獣のように体毛が生えた体。


「町田。お前は自らの満月で変身した『セルフ狼男だ』」


 カーン!


 次はその左を見る。三浦。こいつは身たしなみがだらしがない。それを注意すると一応なおしては来るのだが、鼻毛だけはのびたままだ。いつも鼻毛ばかりのばしやがって。


「三浦。お前は『ろくろ鼻毛』」


 カーン!


 次は室井。こいつはとにかく押しが弱い。客に言われるとすぐに案件を引っ込める。

 一旦持ち帰るが口癖だ。客があれこれ注文をつけるのはあたりまえだろう。そこで踏ん張らないでそうするんだ。それを一旦一旦って。弱腰すぎる。ふにゃふにゃのペラペラだ。


「室井。お前は『一旦もめん』だ」


 カーン!


 目黒。女性だ。まだそんなにいっていないはずなのに、ひらきなおっているのか完全に恥をすてたおばさんだ。こいつは社員食堂でいつも大量にソースを使うらしい。苦情が来ている。成績が悪いばかりにそんなことまでまわりから言われてしまうのだ。


「目黒。お前は『ソースかけババア』だ」


 カーン!


 そして、そんなぼんくらの面倒を押し付けられ、同期の上司からくそ河童よばわりされる有様のこの俺。

 俺は「くそ河童」じゃない。いつも部下の尻拭いをさせられているのだ。


「俺は『ケツなめ』だ」


 カーン!


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