なめらかに
森田童子 / 船がくるぞ
森田童子 - 蒸留反応
を それぞれ聴きながら
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たとえば、愛するということは、たとえば、変な音階で歌をうたうこと。
たとえば、愛するということは、たとえば、歌のように自由であるということ。
たとえば、愛するということは、のびやかに、音が震えだすこと。
爪が欠けるね、昨夜降り積もった雪のあたりに沈められたウサギの子をすかしてみて、
――そのウサギは、氷でかたどった工作のウサギの子。
たとえば、愛するということは、耳の後ろを削り取る痛みに似て。
たとえば、愛するということは、ポケットの中でわすれさられた紙屑を捨てられずに小さく小さく縮こまセルこと。
ときには、喉が裂けそうなほどに、焼け付くほどの憎しみを感じることもあるよ。
ときには、気づかぬほどに、愛しさに愛しさを抱きしめることだってあるよ。
ときには、ずるさを愛情とやさしさだとしがみつきたいときだってあるよ。
――それらが、すべて嘘であっても。
たとえば、愛するということは、ときには私をころすことであり、
たとえば、愛するということは、あなたを閉じ込めようとすることであり、
――だから、私は愛さない。
それらは、醜くて醜くて、愛しすぎるから。