96話
洞窟の中を進む。
先頭から薺、ロアン、アルハイト、ピネル、黒部 圭太の順番の一列。一列になっているのはそれだけ道が狭いからでここを無理やり二人で並んで歩けば肩の皮膚が全て無くなるだろう。
「薺すごいな明るいな」
ハイトのアホみたいな感想の通り、暗い洞窟の中で光を帯びる薺のおかげで歩きやすい。
「さすがだな」
さすがは勇者。
剣を抜くとただの剣が光輝き血も油も弾いて切れ味が落ちることがない。
「敵に見つからうのではないかと危惧していたのですが」
「すげえよ、薺さん、あんたすげえよ」
敵見つかりまくってるのは事実。
しかし………
強い。
襲い掛かって来る魔獣をものともしない。
一閃。
まるでコンビニまでの散歩かと思うほどスムーズだ。
薺が圧倒的すぎて出てきているコウモリの魔獣、昆虫の魔獣、蛇の魔獣がどれくらいの強さなのかがわからない。なに薺の剣は離れた相手にも余裕で届くから。
前に戦ったゴブリンよりは強いと思う。けど自分で戦って確かめてみようとは思わない。
なぜならば俺の攻撃手段がステゴロだから。
ステゴロ………武器を使わずに行う喧嘩、殴り合い。
虫を素手で潰すなんてできればしたくない。
なぜ素手なのか?
不細工だから。
俺の剣さばきを見たロアンは「うーむ」といったきり何も言わなくなった。自分でもわかっている。不器用だということは。下手だということは。ただの力任せだということは。
そもそも剣なんか握ったことがない。いきなりできるはずがない。
それに比べて薺。
家が剣術の道場で子供のころから剣を握って修練に明け暮れていたそうだ。
だから基礎ばっちり。
そして勇者。
技術+身体能力
もはや美しい。
素人目に見ても薺の剣は美しいのだ。
剣筋は滑らかでブレがない。
足さばきは細かく速く音が少ない。
もはや芸術の域にまで達していると思う。
だから正直言って恥ずかしいのだ。
いやなのだ。
そんな奴の隣で剣を振るのは。
俺は素手のほうが性に合ってるぜ、みたいな芝居をずっと続けている。
剣ほしい、剣格好いい。
つらい。
めちゃくちゃつらい。
棘毒野郎にやられたせいで体もまだ痛い。薺ならあんな奴は速攻で倒していたんじゃないかと思う。
あーいやだいやだ異世界も甘くないよ。
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