95話 -新たな仲間-
「痛てぇ体がめちゃくちゃ痛てぇ」
「大丈夫ですか兄貴?」
身を捩る俺に心配そうな声。
「なんでまだいるんだよお前は」
それは最初にこの「精霊の泉」で俺たちを待ち構えていた男たちのボスみたいなやつだった。
「いやね、兄貴の戦いが凄すぎて体が動かなかったんですよ。特殊スキル持ってる奴の戦いなんかめったに見れないっすからね」
「誰が兄貴だ!」
「俺感動したんです、兄貴って呼ばせてくださいよ」
「どう見てもお前のほうが年上だろ」
「そんなん関係ないっすよハートっすよハート」
「話にならんわ、もうどっかいけ」
「でもこいつらそんなに悪い奴らじゃないぞ」
「バカか!お前を殺しに来たんだぞハイト」
「そんなつもり最初からなかったですよ。言ったじゃないですか金をもらって逃げるつもりだったって」
「誰が信用するかそんな言葉」
毒棘を使う男との戦いが終わった後、アドレナリンが切れてきたのか体が痛み始めた。顔も青あざができていてちょっと触っただけで痛い。
だから寝ながら呻いているというわけだ。呻いたところでどうにもならないけどそうせずにはいられない。
はっきり言えば呻くだけじゃ止まらないくらい体が痛い。ひとりだったらきっと涙ぐんでいただろう。
足音が近づいてきた。
薺か?
「ケイタさん」
違った。ハイトの執事みたいなロアンだった。
「さきほどケイタさんが戦った男。教会の関係者だと思います」
「なぜわかる?」
「刻印です、腹部に刻印がありました。あれは教会のものだと思います」
「刻印?なんだそれは」
「忠誠の刻印と言われていますが詳しくはわかりません。教会が公にはしていませんので。ですが刻印は人間の力の限界を引き上げると言われています」
「力の限界を引き上げる?」
「噂ではマッチ棒のように華奢だった体だったものが、数日で丸太のような太い腕の筋骨隆々の体になったと聞きます」
「他人の能力を上げる特殊スキルか?」
「巷ではそう言われています」
おかしい。
それならばなぜ………
足音。
「薺」
ガッシャガッシャガッシャガッシャ
「カニ?」
薺の腰の高さくらいの大きさのカニを連れて戻ってきた。
「・・・」
〇●〇●〇●〇●〇●
特殊スキル「夜思花の命」
◎命無き物質に仮初の命を与える。
◎生み出されたもののステータスは素材となる物質により変化する。なお、スキル使用者の特性も受け継がれる。
◎生み出されたものはスキル使用者に絶対服従である。
〇●〇●〇●〇●〇●
薺の特殊スキル「夜思花の命」を使った。
素材としたのはあの棘毒野郎の死体。さんざん俺を苦しめてくれたクソ野郎だが使うに越したことはないと思う。
最初に生み出した「ホネの助・ボーン座衛門」は俺のリクエストであの形になったが今回は薺に任せてみた。
結果、カニ。
目と目の間の甲羅を薺が撫でるとカニは気持ちがいいようで、目を細めてうっとりとした感じになってブクブクと泡を吐き始めた。
「名前はどうする?」
「・・・」
薺は悩んでいる。
泡のひとつひとつが結構デカい。それでいて消えない。どんどん積みあがっていく。なんだこれ?
「椅子!?」
泡は漫画喫茶にあるようなリクライニングチェアの形になった。
「座れるのかこれ」
カニが目をパチパチした。大丈夫といっている気がする。
「おお!」
座れた。
ゆっくりと腰かけてみたが、空気で膨らませたベッドみたいな感覚。体を弾ませて椅子に負荷をかけてみるが大丈夫だ。泡だから弾けるかと思ったが丈夫そうだ。
「お前そんな特技があるのか」
「ニニ…」
そんな声だすんだ。
「・・・」
「ぶくぶく」が仲間に加わった。
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