94話
「ぐぎぃいいいいあああああいたいいああ」
複数の骨が折れる音。
「止めてくれたのむ、許してくれ、ごぼっ」
大量の吐血。
体の表面からも大量の血が流れている。
「待ってくれ、解毒剤が、解毒剤があるんだ」
もう一度叩きつけた。
「止めるわけねえ」
叩きつける。
「許すわけねえ」
叩きつける。
「待つわけねえ」
叩きつけた。
「お前解毒剤なんか持ってねえだろ」
体中の骨が折れぐにゃぐにゃになった男の顔を見る。
「ハッハハッ、その通りだよ馬鹿、最後だけは馬鹿じゃなかった……な………」
生気が消えた。
「ケイタ!」
倒れるのと同時にアルハイト、ロアン、ピネルが駆け寄ってくるのが見えた。
「大丈夫かケイタ!頼む、死なないでくれ!」
「無理だ………」
毒によって黒ずんだ自分の手が見える。
「薺のところに………」
最後に言いたかった。
担がれ運ばれていく中で考える。
駄目だ頭に霞が掛かっていく。
死ぬのか、俺は。
もう終わりなのか。
もっとやりたいことが。
せっかく楽しくなってきたのに。
頭にバランスボールをぶつけられたみたいな振動に体が揺れる。
「大丈夫かケイタ!」
その正体を知ろうと体を動かすよりも早く。
全身が総毛だつほどの幸福感。
この感覚には覚えがある。
≪一部の悪魔は他者の魂を喰らう事で我がものとし、力を増す。≫
魂を喰った時の感覚。
悪魔のDNAが騒ぐ。
戦いに生き戦いに死ぬ種族、力に生き力に死ぬ種族。
遺伝子の歓喜が圧倒的な幸福感をもたらす。
なにかが体を駆け巡っていく。
〇●〇●〇●〇●〇●
特殊スキル 448種類の毒蛇から448回のキス Lv3
448種類の毒に対する耐性を得る。自分の血液を毒に変化させ任意の効果をもたらすことができる。血液は解毒剤として他者に与えることのできるほか、体に害を与える病原菌に対するワクチンともなる。
〇●〇●〇●〇●〇●
頭の中の霧が晴れていく。
体にまとわりつく重いヘドロが流れていく。
「薺!」
運んでもらっている手から飛び降り薺のもとに急ぐ。
「けどあの女、薺とかいったか、あっちの方は助かるかもな。あれは即効性が強い代わりに毒性はそこまで強くないからな」
あの男の声が再生される。
大丈夫、死ぬわけはない。
死ぬわけはない、勇者なんだ。
「薺!」
うつ伏せに倒れている体を半回転させて正面にする。
「いま解毒してやるからな!死ぬんじゃないぞ!」
人差し指の肉をかみ切る。
薺に反応はない。
まるで寝ているかのようだ。
「ん?」
違和感。
血が滴っている手の掌を見てみる。
浅黒い。
毒のせいで肌の色が変わってしまっている。
特殊スキル「448種類の毒蛇から448回のキス」を手に入れたおかげで黒かった肌も戻っては来ているが完全には戻っていない。
おかしい。
薺の肌には何一つ変化がない。
きめ細やかでしっとりしていて化粧品のCMみたいだ。
こいつ………
鼻をつまんでみる。
………
………
ぽっ
口が開いた。
「薺」
目がゆっくりと開く。
「毒なんか全然効いてないよね?」
「・・・・」
今が気が付いた?
ウソくさい。
「本当か?」
「・・・・」
本当、本当ってコイツ。
「本当を繰り返すやつは嘘ついてると思うんだけどな」
「・・・」
苦しかった。
そういって立ち上がって小さく咳をした。
ものすごくウソくさい。
でもなぜ?
わからない。
心が読めない。
隷属の魔法で繋がっているはずなのに………
目を合わせる気のない薺を呆然と見つめた。
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