91話
精霊の泉。
かつて王族が身を清めるための儀式を行っていたとされる場所。
急な山道を登り、その入り口である洞窟にようやくたどり着くとそこには十数人の汚い格好をした男たちが待ち構えていた。
「アルハイトだな!待ってたぜ」
真ん中にいる髭面で背の低い男が声を張り上げた。
「何者だあいつらは?」
「わからない………けど多分俺のことを………」
問いかけたハイトの顔色が悪い。
「おとなしく言うことを聞けば命だけは助けてやる」
ガンガンの上から目線。
「見て驚け俺の特殊スキルを!」
特殊スキルだと!?
「ウオをおおおおおおおおおお………」
体が膨れ上がっていく。
周りの男たちよりも頭一つ分小さかった男の体。
さらに筋肉が盛り上がり全身が浅黒く変わっていく。まるでボディービルダーみたいだ。
「こうなった俺は強いぞ」
じゃあ普段は弱いってことか?
「けどその反動でちょっとばっかり狂暴になっちまってな大人しく言うことを聞かねえと怪我じゃ済まねえぞ」
「お前らの目的は何だ」
「ああまだ言ってなかったか」
言ってねーよ。
「ある人物から仕事を依頼されてな。その仕事っつうのはな!そこのガキ!お前を殺すってことだ!」
アルハイトの肩が震えた。
「理由は?こいつは特殊スキルを持ってない。放っておいて問題ないはずだ、それなのになぜわざわざ殺す?」
「そんなこと俺らが知るわけねえだろ」
「誰に頼まれた?」
「俺たちはプロだぜ、口が裂けても言えねえな」
そうか、それなら。
「薺」
男たちとの距離数メートル。
薺は一歩前へ踏み出て滑らかに鞘から剣を引き抜いた。
「何を考えてやがるてめぇ!この人数の差がわからねえのか!」
何をいまさら。
「兄貴!兄貴!」
「お前ら落ち着け!」
「兄貴違うんだ、兄貴の体に」
一筋の線。
血が噴き出した。
「うをおおおおおお!」
「何をしやがった!」
「嘘だろ!いつの間にコイツやりやがったんだ全然見えなかったぞ」
違う。
何もやってない。
薺はただ剣を引き抜いただけ、ただそれだけ。
「こいつやべぇ」
剣が光を放つ。
威圧感が一帯に広がり男たちの額には脂汗がにじんでいる。
死
その存在を感じ取っているらしい。
薺………お前日を追うごとに強くなっている気がするな。
「ちょっと待て話を聞け!」
「今更何を待つっていうんだ」
「俺たちは最初っから殺すつもりなんて無かったんだ」
「何言ってんださっき言っただろ」
「違う。「殺せ」確かに俺らはそう言われたけど本当は逃げるつもりだったんだよ」
「なに?」
「依頼してきた奴からは前金をもらってある。そんでもってお前らを見逃してやる代わりに金をもらう。それで逃げれば誰も殺さずに大金が手に入る。そういう計画だったんだ」
「ふーん………」
「本当だ信じてくれ」
「まあ、駄目だな」
「待ってくれ俺たちはーーー」
目の端に一瞬なにかが光った。
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