89話
「なーん」
白猫のラリーが薺の足に体を擦りつけつつ鳴いている。
「さあ今日中には王都につくぞ」
BLULULULULU………………
「しゃーん」
威嚇された。
しっぽを引っ張ってやろうか?
「ケイタも一緒に行こうぜ「精霊の泉」」
「行かん!」
「ラリーがほかの人にあんなになつくなんて普段ないんだ。だからきっとラリーだって一緒に行ってほしいと思ってるんだ、な、ラリー?」
「なーん」
「ほら!」
「ほらじゃない!その猫が白装束を持ってきたのはお前になんだからお前が行け」
「そんなこというなよー」
ラリーはある日突然あらわれた。見張りの目を盗んでハイトの母親の布団の上でぐーすか寝ていたのだ。
その白いふわふわの毛と青い目をすっかり気に入られ飼われることになった。
すっかり失くしてしまったと思っていた王から送られた指輪をくわえてきたり、不審な人物が忍び込んだ時に鳴いて知らせたことで危機から救ってくれたりするうちに不思議な力を持っていると評判だった。
そんなラリーがあるときハイトの元に白装束をくわえて持ってきたから周囲は大騒ぎになった。
その白装束は王族が「精霊の泉」で身を清めるときに使うものだったからだ。しかもその儀式は数百年前で途絶えていて白装束があることなど誰も知らなかったのだ。
驚きつつもいったんは仕舞った白装束をラリーは何度も加えて持ってきた。
これは精霊の意思かもしれない。
ハイトの母親は考えた。
この世界最大の宗教団体であるプーチャル教は精霊の存在を認めていない。神はプーチャル教の認める神だけが神であり精霊は邪な存在であると定めているのだ。
神から特殊スキルを与えられなかったアルハイトは精霊から力を与えられるかもしれない、そう考えた。
過去の文献に「精霊の泉」について書かれたものはない、しかし過去の王族はすべてこの場所で儀式を行っていたことはわかっているからだ。
何かあるはず。
たとえプーチャル教の不興を買おうとも、ハイトの母親は決意した。
「魔獣もうじゃじゃいるらしいしさー。手伝ってくれよ」
「手伝ってほしいなら対価をだせ!お前はもう何も持ってないだろ」
「うわっ、ひど」
「うるせー!地獄の沙汰も金次第だ、覚えておけ」
精霊の泉には魔獣が住み着いているらしい。しかもそこらに出てくる魔獣よりも強いという。
「なーん」
「・・・」
え?
薺さん。
なんでですか?
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