88話 -恋は計画的に-
雲一つない晴れ上がった空。
草木に残った昨日の雨の滴が太陽の光でキラキラと輝いている。
「いい天気だなケイタ!」
「呼び捨てすんなこの野郎!」
「ケイタさんどうもありがとうございました。朝食も非常においしくいただきました。今まで聞いたこともないお料理でしたが大変に素晴らしかったです」
「ありがとうよ」
アルハイト、ロアン、ピネルの三人は重そうな荷物を背負っている。
「精霊の泉、だったか」
「そうだ。そうすれば精霊様が力を分けてくださるかもしれないからな」
昨日晩飯を食べた後でぐだぐだしているうちに段々と打ち解けてきて三人とはいろいろな話をした。
なんとこのアルハイトというガキ。元気だけが取り柄で、頭が悪そうで、人を呼び捨てにする、学習能力のないガキは生意気にも王族の血をひいているという。
しかしうらやましいことばかりではない。
なぜならばハイトの母親が一般人だからだ。王である父親が城を出て街で遊んでいる時に出会い一目ぼれした王が自分の妃にしてしまったらしい。
普通であれば王が権力を使って無理やりに………という話になるだろうが違った。
巧妙に仕掛けられた罠。
普段の重責から一時的に解放され、賑やかな散策を楽しんでいる王の目の前で小さな異変。
ハンカチが零れ落ちた。
とっさに声を掛けた王の目前で美しい女性が振り返った。
運命的な出会い。
王は一目で恋に落ちた。
完全なる罠。
まるで映画の始まりのようなその出会い。美しすぎる出会いは完全に仕組まれたものだった。
どうやったのか、彼女は機密事項だったはずの王の散策の情報を事前にキャッチしていたらしい。
そうして計画を立てた。運命的な出会いの演出。
まずは王という人間を知ることから。。
実際の王を知る人間は何も身分の高いものだけではない。女中、料理人、商人など一握りとはいえ一般人の中にもいる。
複数の人間から情報を集めた。
分析。
王の好みであろう服装、髪型、メイク、言葉遣い。友人に協力させて何度も振り返る練習をしたと母親が語っていたそうだ。
なんと頭の切れる女だろう。
だからといって根っからの悪女というわけではなさそうだ。ハイトも「厳しいけど優しい」といっていたし、ロアンとピネルからも信頼とか尊敬の感情を感じ取れる。相当にやり手らしい。
他の王子たちに比べハイトの血筋は劣る。だから扱いは決して良いものではない。
そしてもうひとつの理由。
無能だから。
ハイトは王族であれば必ずといっていいほどもっている特殊スキルを持っていないらしい。なかなかつらい状況である。
一般人であれば特殊スキルを持っていないことが普通であるが、持っていることが普通である王族の中で持っていない。
「よくもひねくれなかったものだな」
「どういうこと?」
「俺だったら性格がねじ曲がっているだろうと思ってな」
「何言ってるかよくわかんない」
「わかれ!」
母親が一般人であり、そして特殊スキルを持っていないとなれば周囲の人間はハイトをうすら笑うやつらばかりになる。
そんななかでハイトの味方がロアンとピネルの二人というわけだ。
「なーん」
そして猫のラリー。
この猫が三人を「精霊の泉」へと導いた。
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