87話
美味しそうな匂い。
決死の覚悟で扉を開けたロアンとピネル。
ふたりが見たものは明るい光に照らされた快適そうな室内と、テーブルの上の見たこともない料理料理料理………。
美味しそうにむさぼるアルハイト。
「お!遅かったな」
「遅かったな、じゃねーよ!」
「なにを怒ってんだよピネル」
「なーん」
黒髪の少女に撫でられているラリーの姿もあった。
「これはどういうことでしょうかアルハイト様」
さすがのロアンも呆れている。
彼からは先ほどまでの緊張は見当たらない。どうやらとりあえずの危険はなさそうだと判断したようだった。
「どういうことなのか、それはこっちが聞きたいことだ!」
黒部 圭太は言った。
「人の家に勝手に入って来るとはどういうつもりだ!」
「ちょっとあんた!なんなんだ」
「頭の悪いやつだな、さっき言っただろう。これは俺の家だと」
「それに関しては………」
「床を見ろ泥だらけじゃないか!」
「うっ、、」
建物の入り口から1mくらいのところに3足分の靴がある。ロアンとピネルは靴を履いたままその場所を大きく踏み越えてしまっていた。
雨が降る中でアンデットとの戦闘。
そのせいでふたりの靴は泥だらけで、圭太の言う通り床を汚してしまっていた。
「人の家に勝手に入った挙句に汚しておいて謝罪もなしか!」
「申し訳ありません」
「すんません」
ふたりは萎れた花のように頭を下げた。
「お前たちを招待した覚えはないさっさと出て行ってもらおうか!」
「ちょっと待ってくださいケイタさん」
アルハイトは立ち上がった。
「ふたりは俺の知り合いなんだ。この雨の中の野宿はつらいからさ、一晩泊めてよ」
「断る!その猫もつれて全員とっとと出ていけ」
人差し指をビシッとさして圭太は宣言した。
「え!?」
驚きの声を上げたのは黒部圭太。
痺れたように体が固まっている。
視線が集まる中、ぎこちない動きで振り返った圭太の先にあったもの。
薺。
薺の視線。
薺の視線はいつものボーっとしたようなものとは全く違った。
「怒っているのか?」
「・・・・・・・・・・」
猫がかわいそう?
勇者の怒り?
怖!
ついさっきまで調子がよかったのに一気に冷や汗が噴き出す。
猫のことでここまで怒るとは。
まだ追い出したわけでもないのに。
「猫を追い出せなんて一言も言っていない!」
敗訴。
完全に屈した。
無理だ。
圧すごいし。
「でもあんたさっき………」
「これもう一個あげるからさ、頼むよケイタ」
「呼び捨てするな!」
「いいでしょ?ほら」
「まあ、いいだろう………」
圭太は薺の顔色を伺っていた。
少し前まで調子に乗っていたのに、まるで萎れた花のようだった。
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