86話
「オォオオオ!」
ピネルの両手に炎が集まる。成人の頭部ほどの大きさの炎の玉。
「ハア!」
直撃し焼き尽くすと思われた。
しかし
「嘘だろ」
炎は霧のように消え去った。
僅かな音。
ロアンがアンデットの背後に回り込んでいた。
振りかぶった杖での一撃。
パンッ!
ロアンの杖は空へと打ち上がり地面に落ちた。
背後からの攻撃に対して振り向きもしなかった。ただ背後へ向けて剣を振るっただけ。
「完全に見切ってやがる」
「これほどの強さとは………」
雨の浮いた地面に落ちたままの杖。
ロアンが拾わないのはその場所がアンデットの間合いの中だと考えているから。むやみに行動すると自分よりも格上の敵に無防備を晒すという最悪の行動になってしまうからだ。
そんな無謀なことをするほどロアンは若くないし馬鹿でもない。
どこを見ているのか、何を考えているのか一切わからない。
冷や汗が垂れる。
「オォオオオ!」
ピネルの声。
発射された五つの炎。
そのすきにロアンは懐から取り出したナイフを投げつけた。
しかし、
炎はまたしても霧のように消え、そしてナイフは空を切った。
「コイツ何なんだよクソ!アタシの炎が全然効かねえ!いったい何なんだ」
「それだけじゃない、ものすごいスピードをもっています」
避けられることは想定していた。
だからロアンは二度投げた。たとえ躱されたとしてもその直後ならば素早く動けないはず、そう考えていた。
しかしあまりにもあっさりと二度めも躱された。
「コイツほんとになんなんだ、こんなにおかしな奴なのに噂すら聞いたことすらないっておかしいだろ!」
「私もです。出会った人間はすべて死んでいるのか、それとも………」
「ロアンさん下がってくれ!アタシが最大火力をお見舞いしてやる!」
「待ちなさい!」
「どうしてだよ、ロアンさん!」
「おかしいのですよこのアンデット」
「おかしいぐらい強いのはわかってるよ!」
「そうじゃないんです。このアンデット攻撃をしてこない」
「あえ?」
「攻撃に対しての反応だけです」
「そう言われてみれば」
「それよりアルハイト様です」
「そうだ!どこいったハイト!」
「行く先はひとつしかありません」
「あの建物か!」
「そうです。このアンデットは放っておいて、すぐにアルハイト様の救出に向かいます」
「このアンデット背後から襲い掛かって来るんじゃないですか?」
「そんな真似しなくてもこいつは私たちより十分に強い」
「確かにそうか」
「急ぎます!アルハイト様が心配です」
「わかった!」
アンデットに背を向け走った。
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