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76話 -再び-

 


「はっ!」


 ウサイトは目を覚ました。


「え!?」


 静けさに包まれている周囲。戦場だったはずの場所。その場所は何事も起きていない静かな森と化していた。


「隊長!?」


 右となりで横になっていた。口元からよだれ。子供のようにスヤスヤと、楽しい夢でも見ているのか口角が上がっていた。カワイイ・・・。




 ムシャムシャ。


 馴染みのある音。怒号、雄叫び、うめき声からかけ離れた音。



「ケイタさん、なずなさん、一体何を・・・」


「見て分からんか?」


 わかる。けれど聞かずにはいられなかった。何が起こったのか分からなかったから。


「食事、ですか?」


「それ以外の何に見える」


 当たり前のように、淡々と述べられた。



 木の下にシートを敷いた黒部くろべ 圭太けいたなずな


 見たことも無い物を食べている。なずなの食べる勢いはものすごい。まるで三日三晩何も食べていなかった人みたいだ。


 いや、今はそんなことはいい。


 わけのわからないことを言っている奴、みたいな目こっちを見られた。なぜなんだろう、分からない。


「オークは、モンスターは?」


「死んだか逃げた」


 あまりにも端的な答え。なんでちゃんと答えてくれないんだろう。殴られた後頭部がヒリヒリと疼いた。文句を言っても良いようが気がするが、違う気もする。


 多分助けられたのだろう。それは分かっていた。



「隊長!隊長!」


 モントドールを揺さぶる。こんなわけのわからない状況、ひとりで理解する自信が無かった。


「・・ん、はっ!」


「隊長!」


 慌てて上半身を起こしたモントドール。


 ウサイトは抱き着いた。



「隊長、、、」


 生きている。


 なにがなんだかさっぱりわからないけど、生きている。


 隊長とふたり、生きていた。


「ウサイト君・・」


「隊長、、、私、、」


 涙が止まらなくなった私を隊長は受け止め続けてくれた。



「いつまでイチャついている」


「そんなんじゃ!」


 慌てて離れた。


 恥ずかしい。忘れていた。体が熱い。ここには私達ふたりだけじゃなかったんだ。隊長を見たらそんな当たり前のことがどこかに行ってしまっていた。



「ケイタ君!オークは、モンスターは、どうなったんだ」


「見ての通りだ」


「討伐したのか?」


「デカいのはな。逃げたのもたくさんいる」


「まさか!」



 やっぱり、そしてまさか。ウサイトも思う。


 突然変異種のオーク。Sランクを超えるであろう化物。その化け物を倒した。


 怪我をしているようには見えない。そんなことありえない、いや、世界には何人かは存在するだろう。だが目の前にいる二人のことなどウサイトは聞いた事が無い。それほどに強いのならば名が世界に轟いていなければおかしい。


 だが現実は目の前にある。



「まさか?それならこの状況をどう説明する」


 そう、森は静まりかえっている。そして誰一人欠けることなく生きているのだ。


「死体は?あのオークの死体はどこですか」


「収納した。目障りだしな」


「収納・・・」


「収納!特殊スキルか!?」


「まあな」


「凄いじゃないかケイタ君!いや、さすがと言わせてくれ。異空間に物を入れ、取り出すことのできる収納の特殊スキルは世界で数人しか持っていない貴重な特殊スキルだ。さすがだケイタ君!」


「いちいち背中をバンバン叩くな、うっとうしい」



「あのオークをたった二人で倒してしまうなんてありえるんですか?」


 ウサイトにはまだ信じることが出来なかった。


「ケイタ君がそう言っているじゃないか!」


「そうですけど・・・そうですよね・・」


 事実としてあのオークはいない。それが少年の言葉の正しさの証明だ。


「ああ火の女神様、感謝致します。おかげで街の人々の命を救うことが出来ました」


 祈り。天に向かって両の手を合わせ祈りを捧げた。


「ウサイト君、やったぞ。我々が皆の命を救ったんだ」



 笑顔。


 純粋な笑顔。


 もう二度と見ることが出来ないはずだった笑顔。


 心のモヤモヤが晴れていく。


 いい。いいんだ。わけがわからなくたっていい。後頭部がちょっとだけヒリヒリしたっていい。この笑顔をまた見ることが出来たんだから。


「はい!隊長!!」


 じんわりと嬉しさが広がっていった。



「ところで・・・ケイタ君。それは、何を食べているんだ?」


「これか・・」



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