69話
臭い。
目に染みるほどに強力な獣臭。
これがオーク。
汚い薄緑色の体。身長は低く、子供ぐらいしかない。だが全身にゴツイ筋肉がついていて、決して侮ることはできないと思わせる。
首はほとんどなく、口からは上に突き出た二つの牙、上を向いた鼻、黒い目。二足歩行ではあるが、人間とは全く違う生物だった。
緊張感。
茂みに潜み、息を殺し遠目から様子を伺う。
(オークジェネラルです)
ウサイトの視線の先。他のオークより一回り以上デカい。おそらく180cmはあるだろう。漫画やゲームの印象でオーク=豚のイメージがあったが、肌の色が赤っぽいせいで鬼のように見えた。これがBランクのモンスター。
これを見ると悪魔で良かったと思ってしまう。
もし日本にいた時の身体能力のままで何の特殊スキルも持っていなかったなら、怯え、震える事しかできなかっただろう。右手に持っている武骨な木の棍棒、振るわれずとも、あれが落ちてきただけで大けがは必至だった。
暴力に怯え、奪われ、踏みにじられるだけの人生だっただろう。力こそがものをいう世界。弱肉強食の世界。暴力の権化のような存在を間近に見ることで力の重要性を改めて思う。
というか多くないか?
2体っていってたよな、確か。1,2,3,4,5、5体もいるぞ、オークジェネラル。ちらりと見るとウサイトの顔は青ざめていた。
(こんなはずは、、過去の事例では2体のはずなのに・・・)
(大丈夫だウサイト君、なんとかなる。大丈夫だウサイト君)
明らかに取り乱しているウサイトをモントドールが落ち着かせようとしている。それはいい、パニックを起こされたら作戦が台無し。だからそれはいいんだが、微妙に声がデカい。もっと小声で喋れ。それが腹立つ。
薺は・・・落ち着いている。さすがは勇者だ。
(もう大丈夫です隊長、落ち着きました)
(そうか、よかった!)
いや、だから声がデカいんだよ、モントドール。
(っ!)
息を呑むウサイトの声。
その視線の先、異質な魔物がのしのしと地面を震わす様に歩いてきた。




