60話
「ちょっと君、待ってくれ」
店を出たとたん声をかけられた。
「なんだ」
兵士。
鈍い銀色の鎧を着ている。そして剣。剣を持っている。会いたくない相手、そして、会いたくないタイミングだ。
「この店で騒ぎが起こっていると聞いて来たんだが。君、何か知らないか?」
「何も知らんな」
「そうか、感謝する。ありがとう」
「隊長!ちょっと待ってください、こいつは怪しいです」
「でも今、なにも知らないと・・」
隊長と呼ばれた兵士との間に一人の小柄な兵士が割り込んできた。
「こいつは騒ぎの合った店から高価な魔道二輪車を押して店を出ようとしています。ですがとてもそんな金持ちには見えません。盗んだのかもしれません。きちんと調査すべきです!」
「そんな、まさか、泥棒をするようには見えない!」
「それはモントドール隊長があまりにもお人良しだからです!この前も連続強盗犯をみて怪しくないと言ってたじゃないですか!」
「これは店の店主から貰った。プレゼントだ。だから怪しくないぞ」
「そうか!プレゼントか、もしかして誕生日か?おめでとうといわせてもらうよ」
「・・・それじゃあ」
立ち去ろうとしたところでまた、あの小柄な兵士が入ってきた。
「ちょっと待て!」
「なんだ」
「詰所まで来てもらおうか。話を聞きたい」
「断る」
「なに!?」
「なぜ、なんの証拠もないのに犯人扱いされなくてはならないんだ。おかしいだろ」
圭太は胸を張り、力強く宣言した。
「そうだ!たしかにその通りだ。申し訳ない。さぁ、ウサイト君、君も謝罪するんだ」
「隊長は黙っててください!君、まだ誰も犯人扱いなどしていない。事情を聞きたいから来てくれと言っているだけだ」
「断る」
「やましい所があ」
「用事があるからだ。だから断る。犯人だと思っていないのなら強制される必要はない。そうだろ?」
「そうだ!たしかにその通りだ。用事があるのなら仕方がない。さぁ、ウサイト君、謝ったほうがいい」
「隊長!!」
「本当に申し訳なかった。・・えーと、、」
「圭太だ」
「ケイタ君。本当に申し訳なかった。ウサイト君も決して悪気があったわけじゃないんだ。仕事熱心のあまり迷惑をかけた。代わりに謝らせてくれ、本当に申しわけない」
隊長と呼ばれた兵士が深々と頭を下げた。
「まあ、そこまでいうなら、仕方がないから許してやらんでもない」
「隊長!」
「もう行ってもらって構わない。本当に申し訳なかった」
「ああ・・」
テンスター国兵士ウサイトの前を、黒髪の男と少女のコンビが過ぎ去っていく。男は魔道二輪車を押し、少女は大きな袋を持っている。
怪しい。どう考えても怪しかった。
「隊長・・・・」
「ウサイト君。彼らを信じよう。大丈夫、悪人のはずないさ。僕が保証する」
真剣な眼差しと力強い握りこぶし。
「はぁ・・」
ウサイトはこれに非常に弱い。モントドール隊長は非常に人がいい、今までに何度も救われている。だから押し切ることが出来なかった。どう考えても怪しい人物をみすみす逃がしてしまった。
大ごとにならないで欲しい。
ウサイトは願いを込めエンポラル商会の扉を開ける。
そこには大勢の人間が倒れていた。




